アポトーシス、ミトコンドリア、チトクロームc
Baxは、抗アポトーシスタンパクであるBcl-2のパートナーとして1993年に同定され、ミトコンドリアにおいて細胞死を誘導する(Ref 1)。
このファミリーは3つのサブファミリーに分類される(図参照)。
(1)アポトーシス抑制メンバー
(Bcl-2 , Bcl-xL , Bcl-w など) で4つのドメイン (BH1 〜 BH4)を共有する。
(2)マルチドメインアポトーシス促進メンバー
(Bax や Bak など) で、BH1 , BH2 ,BH3 ドメインを共有する事から“マルチドメインメンバー”と呼ばれる。
(3)“BH3-only蛋白”と呼ばれるアポトーシス促進因子 (Bid , Bil , Bad , Bim , Bmf , Puma , Noxa , Hrk
など) でBH3 ドメインのみでホモロジーを示す。
Baxは、ミトコンドリアのアポトーシス経路において、外膜透過性(outer membrane permeabilization)を亢進させる。これは、アポトーシス細胞死過程において、不可逆となるポイントとかんがえられている。Bcl-2サブファミリーはBaxサブファミリーやBH3-only蛋白質と直接結合し、これらを抑制的に調節している。このような諸反応の総体として、アポトーシス促進蛋白質の活性が抑制蛋白質の活性を凌駕した場合に膜透過性亢進が誘導され、アポトーシスが誘導される。
加齢しつつあるメスマウスは閉経しないが、卵胞の欠乏と閉経後の女性と同様の健康問題を経験する。アポトーシス促進性のBaxを持たないマウスにおいて、卵母細胞の喪失が軽減されることが報告されている(Ref 2)。さらに、Baxのノックアウトが加齢しつつあるメスマウスの健康に及ぼす影響について調べたところ、メスのBaxノックアウト高齢マウスは、野生型マウスよりも痩せていて活動的であった。毛量は多く、白内障の発症率は低く、皮膚のしわは少なく、骨は強固であった。行動解析により、Baxノックアウト高齢マウスは、野生型マウスよりも不安になりにくく、注意力が向上していたが、前後関係の記憶が乏しいことが示された。少なくとも、Baxは、卵巣機能に影響を与え、加齢しつつある女性の生活の質に関与している可能性がある。
1. Oltvai, Z. N., Milliman, C. L., Korsmeyer, S. J. (1993) Bcl-2
heterodimers in vivo with a conserved homolog, Bax, that accelerates
programmed cell death. Cell 74: 609-619. (PMID: 8358790)
2. Perez GI,
Jurisicova A, Wise L, Lipina T, Kanisek M, Bechard A, Takai Y, Hunt P, Roder
J, Grynpas M, Tilly JL. (2007) Proc Natl Acad Sci U S A. 104:5229-34. (PMID:
17360389)
宮崎 剛
Update 20130116