ホルモン、甲状腺、傍濾胞細胞、カルシウム、骨粗鬆症
カルシトニンは、血清中のカルシウム濃度を下げる物質としてCoppらによって1962年に発見された。その後、甲状腺の傍濾胞細胞(C細胞)から分泌されることがわかった。哺乳類以外の脊椎動物では鰓後腺(内分泌器官)より分泌される。
これまでに約30種の動物からクローニングされているが、全て32個のアミノ酸からなる分子量3,500のポリペプチドである。アミノ酸配列は種間で異なるが、ヒトとマウスの相同性は約91%と比較的高い。
主に骨の破骨細胞に作用して骨からのCa2+放出(骨吸収)を抑制し、血清中カルシウム濃度を下げる。
ヒトでは、老化に伴いカルシトニンの血漿中濃度はわずかに減少する(Ref . 1)、あるいは変わらない(Ref . 2)。カルシトニンの減少は、骨粗鬆症発症の一因となり得る。しかしラットでは、老化に伴い血漿中のカルシトニン濃度が増加する(Ref . 3)。24-29ヶ月齢の老齢ラットでは、4-5ヶ月齢の成熟ラットに比べ、カルシトニンの一般血漿中および甲状腺静脈血漿中の濃度、甲状腺からの分泌速度、甲状腺組織中の含有量がいずれも著しく増加する(Ref. 4)。従ってラットでは加齢により甲状腺におけるカルシトニンの合成および分泌の両方が増加するために、カルシトニンの血漿中濃度が増加すると考えられる。カルシトニンの血漿カルシウム低下作用は加齢により減弱する(Ref. 5)ため、カルシトニンの増加は、血漿カルシウム濃度を安定に維持するのに役立つと考えられる。
1) Deftos LJ, Weisman MH, Williams GW, Karpf DB, Frumar AM, Davidson BJ,
Parthemore JG, Judd HL. Influence of age and sex on plasma calcitonin in
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2)Body JJ, Heath H 3rd. Estimates of circulating monomeric
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5)Orimo H, Hirsch PF. Thyro calcitonin and age. Endocrinology 93: 1206-1211,
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堀田晴美 20120831
Update 20120914