[Calpain family]

CAPN1; CALPAIN 1
[別名]
CALPAIN, LARGE POLYPEPTIDE L1
CANPL1; CALPAIN I, LARGE SUBUNIT
CANP1; CALCIUM-ACTIVATED NEUTRAL PROTEASE 1, CATALYTIC SUBUNIT

CAPN2; CALPAIN 2
[別名]
CALPAIN, LARGE POLYPEPTIDE L2
CANPL2; CALPAIN II, LARGE SUBUNIT
CANP2; CALCIUM-ACTIVATED NEUTRAL PROTEASE 2, CATALYTIC SUBUNIT

CAPN3; CALPAIN 3
[別名]
CALPAIN, LARGE POLYPEPTIDE L3
CANPL3; CALPAIN III, LARGE SUBUNIT
CANP3; CALCIUM-ACTIVATED NEUTRAL PROTEASE 3, MUSCLE-SPECIFIC, LARGE SUBUNIT

CAPN5; CALPAIN 5
[別名]
HTRA3

CAPN6; CALPAIN 6

CAPN7; CALPAIN 7
[別名]
PALBH; PALB, ASPERGILLUS NIDULANS, HOMOLOG OF

CAPN9; CALPAIN 9
[別名]
NCL4

CAPN10; CALPAIN 10

CAPN11; CALPAIN 11

CAPN12; CALPAIN 12

CAPN13; CALPAIN 13

CAPN14; CALPAIN 14

CAPNS1; CALPAIN, SMALL SUBUNIT 1
[別名]
CAPN4; CALPAIN 4
CANPS
CDPS; CALCIUM-DEPENDENT PROTEASE, SMALL SUBUNIT

キーワード

 タンパク質分解酵素、カルシウム、カルパイン、カルパスタチン

歴史とあらまし

   カルパイン(calpain, Ca2+-activated neutral cysteine protease)は、至適pHを中性付近にもちCa2+依存的に活性化する細胞内システインプロテアーゼとして見いだされた。これまでにヒトでは相同分子として15遺伝子が同定され、カルパインスーパーファミリーとして定義される。組織普遍的に発現するタイプと組織特異的に発現するタイプがあり、生体における様々なタンパク質分解反応に関与している。初期に発見されたCAPN1とCAPN2は活性化にそれぞれµMおよびmM程度のCa2+を必要としたことから、µ-カルパイン、m-カルパインと呼ばれており、組織普遍的に発現している。細胞内には特異的阻害タンパク質であるカルパスタチンが存在しており、細胞内のカルパイン活性の制御因子として機能している。カルパインとカルパスタチンによるタンパク質分解の制御機構は、カルパイン―カルパスタチン系としてタンパク質代謝システムの重要なカテゴリーの一つとなっている。

分子構造

  (Ref. 1)カルパインスーパーファミリーは一次構造上の特徴からいくつかのサブファミリーに分類されており、CAPN1、CAPN2を含む典型型(typical, classical type)と非典型型(non-typical, non-classical type)に区別される。典型型はN末側から、ドメインI(活性化の際に自己消化される領域)、ドメインII(システインプロテアーゼ領域)、ドメインIII(C2様ドメイン)、ドメインIV(PEFドメイン)の4つのドメインに大きく分けることができる。C末端のPEF(penta EF-hand)ドメインは5つのEF-ハンド(Ca2+結合モチーフ)からなる領域で典型型に特徴的な構造である。CAPN1、CAPN2、CAPN9は分子量30,000の小サブユニット(30K, CAPNS1; 30K-2, CAPNS2)とヘテロ二量体を形成する。小サブユニットは典型型カルパインと同様にC末側にPEFドメインがあり、両者のC末端付近でヘテロ二量体を形成する。小サブユニットは酵素活性に必要とされ、調節因子としての機能が想定されている。非典型型はさらにPalB型とSOL型とに区別される。PalB型は真菌、SOL型はショウジョウバエのカルパイン様プロテアーゼの哺乳類オルソログとされ、PEFドメインを持たない。

機能

 (Ref. 1) Ca2+により活性化され、細胞内の基質となるタンパク質(細胞骨格系タンパク質、酵素、膜タンパク質、核タンパク質など)をアミノ酸配列特異的に切断する。この限定分解により基質タンパク質が機能修飾を受けることで、細胞内情報伝達などの細胞機能に関わっている。一方で、カルパイン活性亢進による神経変性やCAPN3欠損による筋ジストロフィー症など、活性の異常な亢進や低下は疾患の原因となることが報告されている。

図. µCL (CAPN1), mCL (CAPN2), 30K (CAPNS1)の構造および自己消化による活性化機構. Ca2+非存在下では非活性型としてCLは30Kとヘテロ二量体を形成している。Ca2+濃度上昇により、Ca2+がCLおよび30KのドメインII, III, IVに結合することで、CLおよび30KのN末端(ドメインI, V)が限定分解され、CLと30Kが解離して活性型CLとなる。

老化・老年病における意義

(Ref. 2)α-klotho遺伝子変異マウスは多様な老化関連疾患を発症し短寿命となることで知られ、早期老化のモデルとして老化に関連する病態の研究に利用されている。このマウスの腎臓と肺ではµ-カルパインの著しい活性化とカルパスタチンの消失が観察され、スペクトリンなどの細胞骨格系タンパク質の分解が亢進している。このタンパク質分解系の異常亢進は腎や肺における組織障害の要因となる。自然老化マウスにおいても同様に、µ-カルパインの活性化とカルパスタチンの消失が認められることから、加齢に伴う腎障害や肺気腫の病態との関連が示唆されている。

Database

114220 CALPAIN1; CAPN1 (µ-calpain; µCL)
114230 CALPAIN 2; CAPN2 (m-calpain; mCL)
114240. CALPAIN 3; CAPN3 (p94, nCL-1)
602537. CALPAIN 5; CAPN5 (hTRA-3)
300146. CALPAIN 6; CAPN6
606400. CALPAIN 7; CAPN7 (PalBH)
           CALPAIN 8; CAPN8 (nCL-2) [NCBI UniGene]
606401. CALPAIN 9; CAPN9 (nCL-4)
605286. CALPAIN 10; CAPN10
604822. CALPAIN 11; CAPN11
608839. CALPAIN 12; CAPN12
610228. CALPAIN 13; CAPN13 原稿リンクなし
610229. CALPAIN 14; CAPN14 原稿リンクなし
           CALPAIN 15; CAPN15 (SolH) [NCBI Protein]
           CALPAIN 16; CAPN16 (demi-calpain, C6orf103) [NCBI Protein]
114170. CALPAIN SMALL SUBUNIT 1; CAPNS1 (30K) 原稿リンクなし
           CALPAIN SMALL SUBUNIT 2; CAPNS2 (30K-2) [NCBI UniGene]

参考文献

1) Sorimachi H, Hata S, Ono Y. Calpain chronicle--an enzyme family under multidisciplinary characterization. Proc Jpn Acad Ser B Phys Biol Sci 87: 287-327, 2011 (PMID: 21670566)
2) Manya H, Akasaka-Manya K, Endo T. Klotho protein deficiency and aging. Geriatr Gerontol Int 10 Suppl 1: S80-87, 2010 (PMID: 20590845)

作成者

萬谷博、赤阪啓子、遠藤玉夫 20111205

Update 201201

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