CAST; CALPASTATIN

キーワード

 タンパク質分解、カルパイン、カルパイン阻害(CANP inhibitor)

歴史とあらまし

  1981年にµ-およびm-カルパインの特異的内在性阻害タンパク質としてウサギ骨格筋より精製された(Ref. 1)。1987年にウサギCASTのcDNAがクローニングされた(Ref. 2)。ヒトCAST遺伝子は第5染色体長腕(5q15-q21)にマップされる(Ref. 3)。

分子構造

  ヒトカルパスタチンは750アミノ酸残基からなり、N末端側のL領域と120〜140アミノ酸からなる保存性の高い4つの繰り返し配列(I〜IV領域)で構成される(図, Ref. 4)。I〜IV領域はカルパイン活性の阻害領域であり、各領域は単独で阻害活性を有する。したがって、カルパスタチン1分子で、4分子のカルパインを阻害できる。

カルパスタチンの分子構造
図 カルパスタチンの分子構造

機能

  Ca2+依存的にカルパインに結合してプロテアーゼ活性を阻害する。正常な組織において、通常カルパインの活性化は一時的であり、細胞内に存在するカルパスタチンによって速やかに不活性化され、過剰な活性化が起こらないように巧みに制御されていると考えられている(Ref. 4)。

老化・老年病における意義

 α-klotho遺伝子変異マウスは多様な老化関連疾患を発症し短寿命となることで知られ、早期老化のモデルとして老化に関連する病態の研究に利用されている(Ref. 5)。このマウスの腎臓と肺ではµ-カルパインの著しい活性化とカルパスタチンの消失が観察され、スペクトリンなどの細胞骨格系タンパク質の分解が亢進している(Ref. 5)。このタンパク質分解系の異常亢進は腎や肺における組織障害の要因となる。自然老化マウスにおいても同様に、µ-カルパインの活性化とカルパスタチンの消失が認められることから、加齢に伴う腎障害や肺気腫の病態との関連が示唆されている(Ref. 5)。

Database

114090 CAST 

参考文献

1) Takahashi-Nakamura M, Tsuji S, Suzuki K, Imahori K. Purification and characterization of an inhibitor of calcium-activated neutral protease from rabbit skeletal muscle. J Biochem 90:1583-1589 1981 (PMID: 6277875)
2) Emori Y, Kawasaki H, Imajoh S, Imahori K, Suzuki K. Endogenous inhibitor for calcium-dependent cysteine protease contains four internal repeats that could be responsible for its multiple reactive sites. Proc Natl Acad Sci U S A 84:3590-3594, 1987 (PMID: 3035539)
3) Inazawa J, Nakagawa H, Misawa S, Abe T, Minoshima S, Fukuyama R, Maki M, Murachi T, Hatanaka M, Shimizu N. Assignment of the human calpastatin gene (CAST) to chromosome 5 at region q14----q22. Cytogenet Cell Genet 54: 156-158, 1990 (PMID: 2265559)
4) Sorimachi H, Hata S, Ono Y. Calpain chronicle--an enzyme family under multidisciplinary characterization. Proc Jpn Acad Ser B Phys Biol Sci 87: 287-327, 2011 (PMID: 21670566)
5) Manya H, Akasaka-Manya K, Endo T. Klotho protein deficiency and aging. Geriatr Gerontol Int 10 Suppl 1: S80-87, 2010 (PMID: 20590845)

作成者

萬谷博、赤阪啓子、遠藤玉夫 20111205

Update 20120126

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