cGMP、GTP、 NO、ニトログリセリン、PKG、ヘム
soluble guanylate cyclase(sGC)は、GTPからcGMPを生成する酵素であり、 NO-sGC-cGMP-PKG系の中心的な位置を占める。sGCは主に細胞内の可溶性画分に観察され、膜結合性GCとは性質が異なる。NOは細胞内及び細胞間のメッセンジャーであるが、NOの細胞内の主要標的はsGCである。
cAMP系は生体のほぼ全細胞に存在するが、cGMP系は限られた組織、細胞に分布している。そのため、cGMP系の構成因子の研究はcAMP系に比較して遅れている。cGMPが生理的に様々な役割を果たす事は明らかにされていたが、細胞内の[cGMP]がどのようにして上昇するのかは不明であった。NOが発見され、NOがsGCに結合してsGCを活性化する事がcGMP生成の主要経路である事が明らかにされて、cGMPの研究が急速に進む事となった。
sGCは𝛼サブユニット、𝛽サブユニットのヘテロダイマー(𝛼𝛽)からなり、ダイマーあたり1分子のヘムを含んでいる。ヒトでは、𝛼サブユニットは2つの遺伝子(GUCY1A2, GUCY1A3(GUCY1A1))に、𝛽サブユニットも2つの遺伝子(GUCY1B2,GUCY1B3(GUCY1B1))にコードされている。sGCのサブユニットの一次構造は真核生物でよく保存されている。
sGCはそのヘムにNOが結合することによって活性化される。活性化されたsGCはGTPを基質としてcGMPを生成する。sGCはCOによっても活性化されるが、COによる活性化の程度はNOに比べるとはるかに低い。
ニトログリセリン等のニトロ化合物は、血管拡張薬として、sGCが発見される前から用いられてきた。これらニトロ化合物の主要ターゲットはsGC、すなわち、NO-sGC-cGMP-PKGである。老化や高血圧などの疾患においてsGCの発現量の変化やcGMP産生量の変化が観察されている(1-4)。sGCはcGMPの生成に直接関与する事から、cGMP産生におけるこれらの変化は、cGMPの細胞内標的である、1)cGMP-dependent-protein
kinase (PKG)、 2)Ion channel、
3)Phosphodiesterase、の機能変化を引き起こすと考えられる(1-4)。NO産生低下による血管柔軟性の低下等もNOの下流のcGMPを介している事が考えられる(NOSの項参照)。
MIM ID 601244 (GUCY1A2)
MIM ID 601244 (GUCY1A3)
MIM ID 601244 (GUCY1B2)
MIM ID 601244 (GUCY1B3)
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遠藤昌吾 20111115
Update 20120227