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IRS1; INSULIN RECEPTOR SUBSTRATE 1
IRS2; INSULIN RECEPTOR SUBSTRATE 2
キーワード
インスリン、IGF-1、インスリン受容体、シグナル伝達
歴史とあらまし
IRS1は1991年にインスリン受容体キナーゼの標的タンパクとして同定された[1]。1994年に、IRS2がIRS1と同様の機能を有する分子として同定された[2]。IRS1とIRS2は脳、骨格筋、心臓、脂肪など、多くの組織で発現しており、インスリンやIGF-1などの細胞外からのシグナルを細胞内に伝達する。
分子構造
ヒトのIRS1、IRS2をコードする遺伝子は、それぞれ第2番染色体（2q36）、第13番染色体（13q34）上に位置している。IRS1、IRS2タンパクは、1242個、1338個のアミノ酸から構成されており、N末端領域にリン酸化チロシン結合（PTB）ドメインと、プレクストリン相同（PH）ドメイン、C末端領域に多数のリン酸化修飾部位を有する。IRS1とIRS2はN末端側の相同性が高く（75 %）、C末端側は相同性が低い（35 %）。
機能
IRS1、IRS2はインスリンやインスリン様成長因子（IGF-1）からのシグナルを細胞内に伝達する。リガンドが結合した受容体にPTBとPHドメインを介して結合すると、活性化した受容体によってリン酸化修飾を受ける。リン酸化されたC末端領域には、p85、Grb2などのSH2含有タンパクが結合し、下流のPI3Kシグナル経路やERKシグナル経路を活性化する。また、多くのサイトカインがIRS1-2の下流のシグナル経路を活性化することが報告されている。
老化・老年病における意義
ヒトIRS1、IRS2のホモログの欠損がショウジョウバエの寿命を延長することが報告されている[3]。IRS1ノックアウトマウスの雌では、平均寿命の延長と、種々の組織における老化マーカーの減少が認められる[4]。脳特異的IRS2ノックアウトマウスでは寿命延長が認められる[5]。ヒトの老化におけるIRS1-2の関与については未だ明らかにされていない。
Database
IRS1 (OMIM147545)
IRS2 (OMIM600797)
参考文献
1) Sun XJ, Rothenberg P, Kahn CR, Backer JM, Araki E, Wilden PA, Cahill DA,
Goldstein BJ, White MF. Structure of the insulin receptor substrate IRS-1
defines a unique signal transduction protein. Nature 1991;352:73-77. (PMID:
1648180)
2) Araki E,Lipes MA,Patti ME,Bruning JC,Haag IIIrd B,Johnson
RS,Kahn CR.Alternative pathway of insulin signalling in mice with targeted
disruption of the IRS-1 gene. Nature 1994;372:186-190. (PMID: 7526222)
3) Clancy DJ, Gems D, Harshman LG, Oldham S, Stocker H, Hafen E, Leevers
SJ, Partridge L. Extension of life-span by loss of CHICO, a Drosophila
insulin receptor substrate protein. Science 2001;292:104-106. (PMID:
11292874)
4) Selman C, Lingard S, Choudhury AI, Batterham RL, Claret M,
Clements M, Ramadani F, Okkenhaug K, Schuster E, Blanc E, Piper MD, Al-Qassab
H, Speakman JR, Carmignac D, Robinson IC, Thornton JM, Gems D, Partridge L,
Withers DJ. Evidence for lifespan extension and delayed age-related
biomarkers in insulin receptor substrate 1 null mice. FASEB J
2008;22:807-818. (PMID: 17928362)
5) Taguchi A, Wartschow LM, White MF.
Brain IRS2 signaling coordinates life span and nutrient homeostasis. Science
2007;317:369-372. (PMID: 17641201)
作成者
藤田泰典
Update 20130117