NOS1; NITRIC OXIDE SYNTHASE 1
[別名]
NNOS; NITRIC OXIDE SYNTHASE NEURONAL

NOS2; NITRIC OXIDE SYNTHASE 2
[別名]
NOS2A; NITRIC OXIDE SYNTHASE 2A
INOS; NITRIC OXIDE SYNTHASE, INDUCIBLE

NOS3; NITRIC OXIDE SYNTHASE 3
[別名]
ENOS; NITRIC OXIDE SYNTHASE, ENDOTHERIAL

キーワード

 一酸化窒素(NO)、アルギニン、シトルリン、オルニチン、血管柔軟性、血管拡張、カルシウム

歴史とあらまし

 NO(Nitric oxide、一酸化窒素)は平滑筋弛緩物質として研究されてきた。ラジカルであるNOは極めて反応性に富み短寿命であったため、その実体の同定には長い時間がかかった。NOを合成するNOS(一酸化窒素合成酵素)は、アルギニン、NADPH、O2を基質としてNOを合成する酵素である。NOSはCa2+/CaMにより活性化されることが知られており、細胞内[Ca2+]上昇を伴う細胞活動などにより活性化される。NOSはnNOS(neuronal NOS, NOS1)、iNOS(inducible NOS, NOS2)、eNOS(endothelial NOS, NOS3)に分類され、これらは主に細胞質に発現するが、それぞれ発現組織(細胞)が異なっている。細胞質に加えて、ミトコンドリアにもmtNOSが存在する。mtNOSはnNOSが翻訳後修飾を受ける事により、ミトコンドリアへ輸送されると考えられている(1)。

分子構造

 NOSは脊椎動物において一次構造がよく保存されている。活性中心にヘムを含み、補酵素として必要なFAD、FMN、BH4の結合部位を有している。ホモダイマーとして存在し、nNOSが有するPDZドメインはnNOSのシナプスへの局在に重要である。NOS1-3の遺伝子は複数のエクソンからなっており、多数のアイソフォームが存在する(たとえばヒトNOS1には4種類のアイソフォームが存在する)。

機能

 NOSはアルギニンおよび分子状酸素を基質として、シトルリン、NOを生成する。この反応にはNADPHが必要である。生成されたNOは膜透過性の気体であり、細胞内のみならず細胞外へも拡散して周辺の細胞へも影響を及ぼす。正常な神経系ではNOは神経伝達物質しての各種性質を示すが、神経細胞の障害をともなう疾病や脳卒中においては神経毒性を示す。内皮細胞由来のNOは、血管を弛緩させる。この作用は血液を必要な部位に供給する役割を担っており、心臓—血管系を含め様々な臓器において内皮細胞に発現するeNOSは重要な役割を担っている。エンドトキシンやサイトカイン類によりiNOSの発現が誘導され、たとえば、マクロファージから放出されたNOは、ガン化した細胞を死滅させる作用、また、殺菌性を持つ。
 また、NOの重要な機能として、直接グアニレートサイクレースに作用して活性化し、細胞内[cGMP]を上昇させる事があげられる(GUCY1の項参照)。cGMPは細胞内でセカンドメッセンジャーとして様々な機能を有する。

老化・老年病における意義

 血管の柔軟性喪失、NO産生低下は老化に伴う心臓血管系の大きな症状である(2、3、4)。脳内、心臓等において血管の柔軟性が失われる事は極めて重大な問題である。また、強力な血管拡張作用を有するNOの産生低下は問題をさらに深刻にする。NOSの基質であるアルギニン濃度を上昇させる(アルギナーゼ阻害により)ことにより、老化に伴うNO量の低下(2、3、4)が回復し、血管の柔軟性も回復される事が示されており(2、3)。NOSに加え、細胞におけるアミノ酸の代謝バランスが重要である事が考えられる。

Database

MIM ID 163731 (NOS1)
MIM ID 163730 (NOS2)
MIM ID 163729 (NOS3)

参考文献

1. Santhanam L, Christianson DW, Nyhan D, Berkowitz DE. Arginase and vascular aging. J Appl Physiol 105:1632-1642, 2008 (PMID: 18719233)
2. Kim JH, Bugaj LJ, Oh YJ, Bivalacqua TJ, Ryoo S, Soucy KG, Santhanam L, Webb A, Camara A, Sikka G, Nyhan D, Shoukas AA, Ilies M, Christianson DW, Champion HC, Berkowitz DE. Arginase inhibition restores NOS coupling and reverses endothelial dysfunction and vascular stiffness in old rats. J Appl Physiol. 107:1249-1257, 2009 (PMID: 19661445)

作成者

遠藤昌吾 20111115

Update 20120228

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