PRL; PROLACTIN

キーワード

 下垂体前葉ホルモン、視床下部、高プロラクチン血漿

歴史とあらまし

 プロラクチンは、下垂体前葉ホルモンの一つである。下垂体前葉の抽出液に乳汁産生促進作用があることが1928年に見出され、その作用をもたらす単独のホルモンとしてのプロラクチンの存在がFrantzとKleinbergによって 1970年に証明された(Ref. 1)。その後、胎盤や脳でも産生され幅広い生理作用を持つことがわかった。

分子構造

 199個のアミノ酸からなる分子量23,000のタンパク質である。

機能

 成熟した乳腺細胞に作用して乳汁の産生と分泌を促進する。一方、排卵を抑制する作用がある。授乳はプロラクチン分泌を促進するため、授乳を続けていると乳汁産生が維持される一方、妊娠しにくい。また、男女とも脳への作用により性欲が抑制される。ストレス時に増加するストレスホルモンとしても知られている。

老化・老年病における意義

 ラットでは、雌雄ともに老化に伴い血漿中プロラクチン濃度が増加する(Ref. 2,3)。老齢ラットでは下垂体前葉のプロラクチン産生細胞腫が多発するが、腫瘍のない場合にも、血漿中プロラクチン濃度が増加する(Ref. 4)。この原因として、プロラクチン分泌抑制ホルモンである視床下部から下垂体門脈血中へのドパミン分泌の減少が示唆された。しかし、視床下部から下垂体門脈血中へのドパミン分泌速度が、老齢雄ラット(24-26か月齢)では成熟ラットより高い(下図、Ref. 4)ことから、プロラクチン分泌の増加は加齢に伴う一次的現象であり、増加したプロラクチンによる負のフィードバック作用によって視床下部からのドパミン分泌が増加すると考えられる。
 ヒトにおいては、高齢者の血漿中プロラクチン濃度が高いという報告や、若年者と変わらないという報告がある。65〜70歳の高齢男性のうち、性欲の低下したヒトでは血清プロラクチンレベルが有意に高く、性欲が正常のヒトでは、血清プロラクチンレベルが低い(Ref. 5)ことから、高齢者における軽度な高プロラクチン血漿が、性欲減退に関与する可能性がある。


血漿中プロラクチン濃度(上)と視床下部からのドパミン分泌速度(下)の加齢変化

Database

PRL

参考文献

1) Frantz AG, Kleinberg DL. Prolactin: evidence that it is separate from growth hormone in human blood. Science 170: 745-747, 1970 (PMID: 5529569)
2) Simpkins JW, Mueller GP, Huang HH, Meites J.Evidence for depressed catecholamine and enhanced serotonin metabolism in aging male rats: posssible relation to gondotropin secretion. Endocrinology 100: 1672-1678, 1977 (PMID:870310)
3) Gudelsky GA, Nansel DD, Porter JC. Dopaminergic control of prolactin secretion in the aging male rat. Brain Res 204: 446-450, 1981 (PMID: 7459639)
4) Hotta H, Ito H, Matsuda K, Sato A, Tohgi H. Age-related changes in rates of basal secretion of immunoreactive vasoactive intestinal polypeptide and dopamine into pituitary stalk blood from the hypothalamus in anesthetized male rats. Jpn J Physiol 41, 317-325, 1991 (PMID: 1942666)
5) Weizman A, Weizman R, Hart J, Maoz B, Wijsenbeek H, Ben David M. The correlation of increased serum prolactin levels with decreased sexual desire and activity in elderly men. J Am Geriatr Soc 31: 485-488, 1983 (PMID: 6759540)

作成者

堀田晴美 20120831

Update 20120914

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