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TARSH; Target of NESH-SH3
[別名]
NESH-SH3/Abi3bp
NESHBP
ABI3BP; ABI gene family member 3-binding protein
キーワード
細胞老化、肺がん
歴史とあらまし
2001年Matsudaらにより、SH3ドメイン結合分子のNESH-SH3/Abi3タンパク質として同定された（Ref.1）。このタンパク質はRac依存的アクチン重合に関与する。マウスTARSH遺伝子では、胚性繊維芽細胞の細胞老化早期において一時的に顕著な発現上昇を示し、ヒトTARSH遺伝子では、肺がんや甲状腺がん患者において顕著に低下するなど、細胞老化およびがん化の両方に関与していることが示唆された（Ref.2）。また、Wakohらの研究により、レトロウィルスにTARSHノックダウンベクターを導入した細胞株の研究で、TARSHタンパク質の発現抑制、ゲノムの不安定化、細胞分裂および細胞周期調節機構における解析が実施され、ゲノムの安定性を制御することが示唆された（Ref.3）。近年得られたノックアウトマウスの表現型では、ホモ個体も胎生致死を示していない。
分子構造
TARSHはSH3結合モチーフと核標的配列をもつ４８６個のアミノ酸からなり、分子量２１ｋDaのタンパク質である。触媒ドメインは持っていない。TARSH遺伝子は3番染色体上に存在する。
機能
NESHとSH3ドメインを介して結合する分子として同定された遺伝子だが、その生物学的機能はいまだ明らかとなっていない。レトロウィルスを利用したWakohらの実験により、TARSH遺伝子の発現をノックダウンしたマウス胎児由来繊維芽細胞（MEF）において、著しい細胞増殖抑制が認めら、S期（細胞内のDNA量が2倍になる期間）の細胞の減少および二核化、セントロソーム(中心体)数の異常が確認されたことから、TARSH遺伝子が細胞周期に関与していることが示唆されている。（Ref.3）
老化・老年病における意義
TARSHのmRNA量がマウス胎児由来繊維芽細胞の老化に伴い増加すること、マウスおよびヒトの胚においてともに高発現していること、ヒトの肺がん由来細胞株および肺がん腫瘍部位の発現量がコントロールに比べて低いことが明らかとされている（Ref.4, 5）。このことから、TARSHによる老化または肺がんとの間に強い関連性があると考えられている。
Database
参考文献
1) Matsuda, S., Iriyama, C., Yokozaki, S., Ichigotani, Y., Shirafuji, N.,
Yamaki, K., Hayakawa, T., Hamaguchi, M. Cloning and sequencing of a novel
human gene that encodes a putative target protein of Nesh-SH3.J. Hum. Genet.
46: 483-486, 2001. (PubMed:11501947)
2) Latini FR, Hemerly JP, Oler G, Riggins GJ, Cerutti JM. Re-expression of
ABI3-binding protein suppresses thyroid tumor growth by promoting senescence
and inhibiting invasion. Endocr Relat Cancer. 15(3):787-99, 2008. (PMID:18559958)
3) Wakoh T, Uekawa N, Terauchi K, Sugimoto M, Ishigami A, Shimada J,
Maruyama M. Implication of p53-dependent cellular senescence related gene,
TARSH in tumor suppression. Biochem Biophys Res Commun. 20;380(4):807-12,
2009. (PMID:19338757)
4) Uekawa N, Terauchi K, Nishikimi A, Shimada J, Maruyama M. Expression of
TARSH gene in MEFs senescence and its potential implication in human lung
cancer. Biochem Biophys Res Commun. 15;329(3):1031-8, 2005. (PMID:15752759)
5) Terauchi K, Shimada J, Uekawa N, Yaoi T, Maruyama M, Fushiki S.
Cancer-associated loss of TARSH gene expression in human primary lung
cancer. J Cancer Res Clin Oncol. 132(1):28-34, 2006 Epub 2005 Oct 4. (PMID:16205947)
作成者
板倉 陽子 20121229
Update 20130628