サイトカイン、がん、慢性関節リウマチ、骨粗鬆症、乾癬
TNF(Tumor Necrosis Factor:腫瘍壊死因子)は、腫瘍の壊死を誘導する活性化マクロファージ由来のサイトカインとして同定された。その後、TNFは炎症、免疫に関与する重要なサイトカインであることが明らかにされた。
TNFにはTNF-α、TNF-β、リンホトキシン-βがあるが、一般に腫瘍壊死因子といえばTNF-αを指す。TNF-αの前駆体である膜結合型TNF-αが酵素により切断されると、可溶型TNF-αとなり、それがホモ3量体を形成し、血液中を循環する。
TNFの受容体にはTNFR1とTNFR2がある。TNFR1にTNFホモ3量体が結合すると、デスドメインを介して細胞内シグナル伝達が活性化され、カスパーゼの活性化により細胞死(アポトーシス)が誘導される。一方で、TNFはTNFR1への結合およびデスドメインを持たないTNFR2への結合を介して、転写因子NF-κBを活性化する。活性化されたNF-κBは炎症・免疫反応で誘導される遺伝子の発現を調節するとともに、アポトーシスを抑制する。TNFはがん、感染に対する防御機構として重要な生理的役割を果たしているが、過剰になると、慢性関節リウマチ、骨粗鬆症、乾癬等の疾患を引き起こす。
TNF-αは慢性関節リウマチの病態と密接に関係しており、TNF-αを標的とした抗TNF-α抗体等の生物学的製剤が臨床で使われている[1]。骨粗鬆症においては、TNF-αは骨吸収を促進することにより、骨量を減少させる[2]。慢性の皮膚角化疾患である乾癬では、TNF-αが皮膚の角化を促進していることから、TNF-α阻害剤が治療に使われている[3]。TNF-α遺伝子の多型が認知症と[4]、TNFR2遺伝子の多型がアルツハイマー病と[5]相関するとの報告がある。
TNF (OMIM191160)
TNFR1 (OMIM191190)
TNFR2 (OMIM191191)
1) Aaltonen KJ, Virkki LM, Malmivaara A, Konttinen YT, Nordstrom DC, Blom
M. Systematic review and meta-analysis of the efficacy and safety of
existing tnf blocking agents in treatment of rheumatoid arthritis. PLoS One
2012;7:e30275. (PMID: 22272322)
2) David JP, Schett G. Tnf and bone.
Curr Dir Autoimmun 2010;11:135-144. (PMID: 20173392)
3) Kircik LH, Del
Rosso JQ. Anti-tnf agents for the treatment of psoriasis. J Drugs Dermatol
2009;8:546-559. (PMID: 19537380)
4) Bruunsgaard H, Benfield TL,
Andersen-Ranberg K, Hjelmborg JB, Pedersen AN, Schroll M, Pedersen BK, Jeune
B. The tumor necrosis factor alpha -308g>a polymorphism is associated with
dementia in the oldest old. J Am Geriatr Soc 2004;52:1361-1366. (PMID:
15271127)
5) Perry RT, Collins JS, Wiener H, Acton R, Go RC. The role of tnf and its receptors in alzheimer's disease. Neurobiol Aging
2001;22:873-883. (PMID: 11754994)
伊藤雅史
Update 20130628