USP46; UBIQUITIN-SPECIFIC PEPTIDASE 46

キーワード

 ユビキチン、プロテアソーム、プロテアーゼ、QTL解析、サーカディアンリズム

歴史とあらまし

 名古屋大学農学部で見つかった自然発症ミュータントのCSマウス。CSマウスにサーカディアンリズム、睡眠パターンの異常に加えて、抗うつ薬の薬効評価に用いられるtail suspension test (TST) やforced swimming test (FST)、その他に異常が見つかった。TSTやFSTで見られた異常に短い無動時間の原因となる遺伝子を量的形質遺伝子座解析(QTL解析)を用いて検索した結果、4番と5番の染色体上の遺伝子の異常が疑われた。このうち5番の染色体に着目して検索した結果、Usp46遺伝子のアミノ酸のリジンをコードする塩基配列がひとつ欠失していることが明らかになった。

分子構造

 マウスでは5番染色体の5 C3.3; 5にある。ヒトでは4番染色体、4q12にある。分子構造は不明。

機能

 Usp46は脱ユビキチン化酵素のひとつで、ユビキチンとタンパク質との結合を切ることによってユビキチン・プロテアソーム系の働きを制御するタンパク分解酵素のひとつである。システイン型のプロテアーゼであるが機能の詳細は明らかではない。Usp46の遺伝子異常による行動の異常としては、サーカディアンリズム、睡眠パターンの異常、TST、FSTにおける無動時間の著名な短縮、nest-building(巣作り)の異常、抗うつ薬imipramineの効果判定不能、muscimol誘発立ち直り反射試験における無動時間の短縮などが見られた。組織化学的には、海馬の抑制性神経細胞の減少、生理学的にはGABA投与によって起こるGABA電流の有意な減少が認められた。

老化・老年病における意義

  Usp46の1つのアミノ酸の欠失によって抗うつ薬の薬効評価に用いられる行動テストで異常、すなわち逆のそう状態に類似した行動異常を引き起こすことから、うつ病の発症と何らかの関係があるかもしれない。ただし、うつ病自体は多因子遺伝疾患なので、ヒトではUSP46単独の異常がうつ病を引き起こすことは考えにくい。

Database

Usp46

参考文献

1) A high-resolution anatomical atlas of the transcriptome in the mouse embryo. Diez-Roux G, et al. PLoS Biol, 2011 Jan 18. PMID 21267068.
2) Usp46 is a quantitative trait gene regulating mouse immobile behavior in the tail suspension and forced swimming tests. Tomida S, et al. Nat Genet, 2009 Jun. PMID 19465912.
3) Identification of transcripts with enriched expression in the developing and adult pancreas. Hoffman BG, et al. Genome Biol, 2008. PMID 18554416.
4) Antisense transcription in the mammalian transcriptome. Katayama S, et al. Science, 2005 Sep 2. PMID 16141073.
5) The transcriptional landscape of the mammalian genome. Carninci P, et al. Science, 2005 Sep 2. PMID 16141072.

作成者

青崎敏彦、三浦正巳、井上律子 20111004

Update 20130628

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