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どうすれば防げるか、痴呆

■痴呆介入研究グループ 矢冨直美

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Q.誰しも痴呆にはなりたくありません。痴呆は予防できないのですか?

Q.なぜ脳は痴呆の原因疾患に対抗できるのですか。

Q.どんな人が痴呆になりやすいのですか。

Q..痴呆予防に効果がある方法を教えて下さい。



Q.誰しも痴呆にはなりたくありません。痴呆は予防できないのですか?

A.痴呆予防が可能であると言い切ると、過剰な期待をもたれるのではないかと思います。しかし、まったく根拠がないわけではありません。痴呆予防が可能なことを示唆する2つの研究を紹介しましょう。そのひとつは、米国のケンタッキー大学の修道女研究の中で報告されている101歳で亡くなったシスター・メアリーのケースです。彼女は、死ぬ直前まで正常で優れた認知機能を示した人でした。痴呆のスクリーニングに使われるテスト(MMSE)では27点で、正常範囲の認知機能を持っていました。ところが死後、脳の病理検査をしてみますと、脳の海馬や大脳皮質に神経原繊維変化やβアミロイド斑の所見からアルツハイマー病に冒されていたことが分かりました。脳の重量も軽く、萎縮していました。なぜ、101歳という高齢まで生き延びて、アルツハイマー病に冒されながらも痴呆の症状を出さずに済んでいたのか。それは、シスター・メアリーが脳の機能を若い頃からしっかり使っていたからだと考えられるのです。彼女は、19歳から84歳まで、現役の数学教師をしていました。数学の教師を退いてからも、福祉活動を活発に熱心に取り組んだ人だったのです。

 痴呆予防が可能なことを示唆する研究のもう一つは、スウェーデンで行われた疫学的研究です。その研究は、社会的な交流頻度と痴呆の発症率との関係を調べた研究です。一人暮らしで、友人が訪ねてくる頻度が週に1度もない、家族が訪ねてくる頻度も週に1度もないという条件の人たちでは、痴呆の年間発症率は1000人中160人でしたが、家族と同居していて、しかも、友人が週に1度以上訪ねてくる、子供も週に1度以上訪ねてくるという条件の人たちでは、1000人中20人の発症率に過ぎませんでした。つまり、社会的なつながりを豊かにもって生活している人は、痴呆になりにくいのです。おそらく、他者との交流は脳の機能を刺激する条件を作り出しているのでしょう。これらの2つの研究は、脳の機能をしっかり使うことが痴呆の予防になりうることを示しているのです。シスター・メアリーの事例は、アルツハイマー病そのものを防ぐことはできませんが、アルツハイマー病に対抗して脳の機能低下をくい止め、痴呆の症状を出さないで済むことを示しています。この意味で、痴呆は予防できると考えられるのです。


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2004/04/02

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