財団法人東京都高齢者研究・福祉振興財団 東京都老人総合研究所
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公開講座

歳をとると歩き方はどう変わる?

財団法人東京都老人総合研究所
運動機能研究室長 青柳 幸利

だれでも歳をとれば足腰の衰えを自覚するように、体力は年齢とともに低下していきます。しかし、日常生活に支障がでるほど体力が衰えてしまわないように、歳をとっても年齢相応に体力を維持したいものです。そのためには、日頃どのようなことに注意すればよいのかをよく知り、そして何より実践することが重要です。

体力は、筋力、持久力、平衡性(バランス)、柔軟性など、いろいろな要素から成り立っています。若年者にはみられない高齢者の特徴として、体力が全般的に低下するという傾向があります。つまり、筋力が低下すれば、多かれ少なかれバランスの能力も低下します。力は弱ってもバランスは抜群、という人はめったに現れないということです。ですから、上にあげたすべての項目の検査をしなければ、自分の体力の評価ができないということではありません。適切な項目一つを検査することで、大まかな体力のレベルはわかります。

いろいろな分析から、このように高齢者の体力全般を代表するのは「歩行の能力」であるということがわかりました。人間は2本足で歩く動物です。実際、私たちは生後1年と最後に寝込む期間を除いて、長い一生を歩き続けます。歩くことが不自由になれば、日常生活に重大な支障をきたすのもうなずけます。歩行の能力は、高齢者の場合、歩く速さ(歩行速度)に反映します。そこで、歩行速度を測ることによって、高齢者の歩行能力、ひいては体力全般を知ることができます。

歩くスピードは、男性でも女性でも歳とともに遅くなります。交差点では1分間に60m歩くことを標準に青信号の時間が設定されています。私たちの研究から、高齢者の多くが普段より急いで信号を渡らなければ間に合わないということがわかりました。歳をとるとどうしても小股で、小刻みに歩く傾向がでてきます。歩行のスピードは体力全般の代表的な指標でもありますから、何とか歩く速さを年齢相応に維持したいものです。

そのためには、こまめに散歩をして、普段より少し早めに、また大股で歩くことを心がけるのがよいでしょう。すると、自然に背筋をのばし、腕を大きく振って歩くようにもなります。そしてできれば自分の体重を利用した、下肢のレジスタンス運動を取り入れるとよいでしょう。いくら速足で歩いても、下肢の筋肉全体の半分ほどしか使われません。残りの半分も積極的に使うようにして、足腰が弱るのをできるだけ防ぎたいものです。

足腰の状態をチェックするために、だれでも簡単にできる歩行テストをご紹介します。平らな床の上に5mの間隔でテープを張ります。そして手前3mほどからできるだけ速く歩き始め、向こう側のテープの3m先まで歩き続けます。膝や腰が痛くて歩きにくい人や、75歳以上の高齢者は、普段の速さで歩いても結構です。この間に、ストップウォッチで5mを歩く時間を計ってもらってください。この時間が、ご自分の年齢ごとに以下の範囲に入れば、同年輩の大部分(68%)の人々と同程度の体力がある、と大まかな判断ができます。

このように、歳をとればだれしも体力が全般的に衰えますが、その程度にはだいぶ個人差があるということが、この表から読み取れます。ですから、この歩行テストの結果に一喜一憂するのではなく、もしご自分の成績に満足がいかなければ、これをきっかけにぜひ運動を始めていただきたいと思います。そしていつまでも自立した、質の高い生活を送りたいものです。

  できるだけ速く歩いたとき 普段の速さで歩いたとき





 
 年齢 (歳)  男性 (秒)  女性 (秒)  男性 (秒)  女性 (秒)
65 〜 69 1.5 〜 3.1 1.8 〜 3.7 3.2 〜 5.0 3.5 〜 5.5
70 〜 74 1.8 〜 3.6 2.2 〜 4.4 3.5 〜 5.6 4.0 〜 6.8
75 〜 79 2.1 〜 4.1 2.6 〜 5.1 3.8 〜 6.2 4.5 〜 8.1
80 〜 84 2.4 〜 4.6 3.0 〜 5.8 4.1 〜 6.8 5.0 〜 9.4
85 〜 89 2.7 〜 5.1 3.4 〜 6.5 4.4 〜 7.4 5.5 〜 10.7

青柳幸利
トロント大学大学院博士過程医学研究科修了。Doctor of Philosophy。カナダ国立環境医学研究所取得後研究員、奈良女子大学生活環境学部助手及び大阪大学医学部非常勤講師を経て、平成11年より現職。高齢者のための運動のガイドラインの作成に関する研究に従事。主な著書に、「高齢者の運動僚法」西村健編著『老人の健康とスポーツ』世界保健通信社、「エイジングと筋運動」勝田茂編著『運動と筋の科学』朝倉書店、他多数。


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2002/11/26

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