中高年からの健康管理−脳卒中、心臓病にかからないために−
1 脈の乱れを感じたら
最近、心房細動という病気が急速に増加し、専門家の注目をあびています。これは心臓の病気ですが脳卒中を起こす病気でもあるのです。その結果、意識障害や半身麻痺、寝たきり、痴呆の大きな原因となるのです。米国のブッシュ前大統領が日本の晩餐会の席で突然倒れたニュースを覚えておられる方も多いと思いますが、心房細動の発作による一過性の脳虚血発作といわれています。また最近では、小淵前首相も心房細動があったといわれています。この心房細動は意外に軽く考えられているふしがありますが、実際には身体に大きな障害を残す重大な疾患なのです。
心房細動というのは心臓の中の心房というところが拡張して、壁が薄くなり規則的な収縮が行えなくなるために、壁が小刻みに震えるのです。そうしますとその心房の中に血栓という血の固まりが形成されてしまい、それが心房の中に浮遊し、ある時にそれが心臓を飛び出して、血液の流れにそって飛んでいき、脳の血管に詰まってしまうのです。そうしますと脳の一部に血液がいかなくなり、脳梗塞という病気を生じるのです。
心房細動は、心臓弁膜症のある人にみられることが多いのですが、最近は弁膜症がない高齢者の方にも増える傾向があります。脳に血栓が詰まらないようにするためには、ワーファリンという血液を固まりにくくする薬を飲み続ける必要があります。このワーファリンという薬は納豆などの食べ物の外に、他の薬と一緒に飲むと相互作用があるために注意が必要です。
2 高血圧
高血圧は脳卒中や心不全、腎不全などの原因となる疾患で、日本人に最も多い疾患の一つです。以前は上の血圧が160mmHg以上、下の血圧が95mmHg以上が高血圧といわれていましたが、最近は上の血圧が140mmHg以上、下の血圧が90mmHg以上でも高血圧と定義されるようになりました。血圧自体は低いほど脳卒中や心筋梗塞になりにくいことも分かってきました。高血圧の原因は未だはっきりこれだというものはありません。しかし、高血圧の発症は以下のように考えられています。すなわち、両親から受け継いだ遺伝の素因がまずあって、そして誕生してからの生活環境、食事、ストレス、生活習慣などが絡み合って高血圧が発症すると考えれています。したがって、遺伝関係が濃厚な人でも、生活習慣の改善を図ることによって高血圧の発症を抑えることが可能です。
ただし、病院の診察室で医師に血圧が高いといわれても家庭で自分で計ったり、近くの薬局で自動血圧計で測定してみると、正常血圧である場合が少なくありません。
このような状態は白衣高血圧といわれており、高齢者の3割くらいにみられています。このような方が、血圧を下げる薬を飲みますと、家での血圧が下がりすぎて、めまいや立ち眩みが生じることがしばしばあります。高齢者の血圧は少しの運動や精神的動揺で上がったり下がったりしますので、血圧を計る場合には5分位は安静にした状態で計るのが望ましいのです。また、高血圧は症状がない方が多いためについ薬を飲み忘れることが多くなります。このような飲み忘れを防ぐためには家庭血圧計で毎朝、自分で血圧を測定し自分の血圧値を知ることが、自分が高血圧であるという認識にもつながり、飲み忘れがすくなくなるのです。
3 高コレステロール血症
狭心症や心筋梗塞は死亡率の高い病気ですが、心臓を養っている冠動脈の動脈硬化によって発生します。その原因としては、タバコ、糖尿病、高血圧とならんで高コレステロール血症が強く関係しています。コレステロールの中には、動脈硬化を促進する悪玉コレステロール(LDL-コレステロール)と、脂肪を血液中から除去する善玉コレステロール(HDL-コレステロール)とがあります。食事療法と適度な運動によって悪玉コレステロールを低下させ、善玉コレステロールを上げることができます。最近では、コレステロールを低下させる強力な薬剤も出てきていますが、基本は食事、運動など生活習慣の是正です。食事では摂取エネルギーの制限、コレステロールや脂肪の摂取量の制限、食物繊維摂取量の増加などです。またアルコールや糖質の摂取も制限する必要があります。
桑島 巌(くわじま いわお)
岩手医科大学医学部卒業。昭和48年東京都養育院付属病院(今の東京都老人医療センター)循環器科勤務。昭和55年〜57年米国ニューオリンズオクスナー研究所留学、昭和62年6月東京都老人医療センター内科医長、昭和63年4月同センター循環器科医長を経て平成9年7月より現職。専門は、老年者の高血圧、血圧日内変動、高血圧性心疾患。日本循環器学会評議員、日本高血圧学会評議員、日本老年病学会評議員。主な著書、「血圧日内変動の臨床」(新興医学出版社)、「メガトライアルから学ぶ循環器疾患の治療」(先端医学社)等多数。

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