〜 ビタミンC不足や老化が喫煙によるCOPD発症リスクを高める 〜

「慢性閉塞性肺疾患(COPD)発症に老化の関与を確認」

米国胸部疾患学会雑誌「AJRCCM」に研究成果を発表


平成18年9月13日
東京都高齢者研究・福祉振興財団 東京都老人総合研究所

 このたび、東京都高齢者研究・福祉振興財団 東京都老人総合研究所 石神昭人 主任研究員、丸山直記 副所長らと順天堂大学医学部呼吸器内科 瀬山邦明 助教授、佐藤匡ら、および東邦大学薬学部 後藤佐多良 教授らの共同研究グループは、老化やビタミンC不足が慢性閉塞性肺疾患(COPD)の発症要因のひとつであること、喫煙によるCOPD発症リスクを高めることを解明した。この研究成果は平成18年9月1日に米国胸部疾患学会雑誌「AJRCCM (American Journal of Respiratory and Critical Care Medicine)」に掲載されたのでお知らせします(要旨が閲覧可能)。→「 論文内容の詳細」

1. 研究目的

 加齢指標たんぱく質SMP30は肺や肝臓、腎臓など多くの臓器に存在し、加齢に伴い減少するたんぱく質として東京都老人総合研究所で発見された。本年4月4日に米国科学アカデミー紀要『PNAS』においてSMP30がほ乳類におけるビタミンC合成に必須な酵素グルコノラクトナーゼ(GNL)であり、SMP30(GNLと同じ)遺伝子を破壊したノックアウトマウスは体内でビタミンCを合成できず、このマウスをビタミンCの少ないエサで飼育すると、普通のマウスの4倍のスピードで老化が進行することを報告した。ヒトは体内でビタミンCを合成できない。従って、この遺伝子破壊マウスは、ヒトに極めて近い老化促進ヒトモデルマウスである。東京都老人総合研究所と順天堂大学、東邦大学は、SMP30と慢性閉塞性肺疾患(COPD)発生進展の関係を明らかにする共同研究を進める過程で、ビタミンC不足や老化が喫煙によるCOPD発症リスクを高めることを解明した。

2. 研究成果の概要

 SMP30(GNL)遺伝子を破壊したノックアウトマウスは体内でビタミンCを合成できない。このマウスを壊血病(ビタミンC欠乏症)にならない程度のビタミンCを与え飼育すると約4倍の速度で老化が進行する。この時、ノックアウトマウスの肺では、肺胞の破壊はないものの、肺胞径が早期に拡大し、ヒトの老人肺と同じ病理所見が認められた。また、COPD発症要因のひとつである酸化ストレスも亢進していた。さらに、このマウスに喫煙させると、正常マウスでは肺にほとんど変化が認められなかったにもかかわらず、ノックアウトマウスではCOPDの主要な病理変化である肺気腫、すなわち肺胞の破壊による気腔の拡大が生じた。しかも、マウスの喫煙実験で一般に実施される期間の1/3という短期間の喫煙で、高度の肺胞破壊が確認できた。

3. 発見の意義

 本研究により、老化やビタミンC不足が喫煙によるCOPD発症リスクを高めることも明らかにした。この研究成果は、米国胸部疾患学会雑誌『AJRCCM』の編集委員に取り上げられ、『Aging and Cigarette Smoke: Fueling the Fire(老化と喫煙:火に油を注ぐ)』という表題でその研究内容を高く評価された。
 WHOの統計では、COPDは世界の死亡原因の第4位にランクされ、今後、ますます患者数と死亡率が高まることが予測される。日本でも約530万人の患者がいると推定される。COPD患者の90%以上は喫煙者で、1日の喫煙本数と喫煙期間に、比例してCOPDの発症率は高まる。そのためCOPDは別名『タバコ病』とも言われる。しかし、COPDと老化との関係は科学的には解明されていなかった。今回、COPDの発症に老化が深く関わり、ビタミンC不足や老化が喫煙によるCOPDの発症リスクを高めることを明らかにできたことには大きな意義がある。COPDの治療薬は未だ開発されていない。老化促進ヒトモデルマウス(加齢指標たんぱく質SMP30(GNL)ノックアウトマウス)を用いれば、COPDの発症機構の解明や治療薬の開発が可能となる。本研究成果は、患者数が激増している『COPDの治療や予防』そして『COPDの原因究明』に多大な貢献をすることが期待される。


【問い合わせ先】
東京都高齢者研究・福祉振興財団 東京都老人総合研究所 
老化ゲノムバイオマーカー研究チーム 老化制御 
石神 昭人(いしがみ あきひと) 
Tel 03-3964-3241(内3034)

順天堂大学医学部呼吸器内科 
瀬山 邦明(せやま くにあき)
Tel 03-5802-1063


2006/09/13
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