「加齢指標タンパク質SMP30は
酸化ストレス、老化や喫煙から肺を保護する」

「慢性閉塞性肺疾患(COPD)発症に老化の関与を確認」に関する論文内容詳細


【掲載論文の要旨】

 慢性閉塞性肺疾患(COPD)は高齢者にみられる『タバコ病』、すなわち、肺の生活習慣病である。本研究は、老化やビタミンC不足が喫煙によるCOPD発症リスクを高めることを解明した。COPD発症機構に重要な手掛かりが得られた。

【掲載論文の英文表題とその和訳】

Senescence Marker Protein-30 Protects Mice Lungs from Oxidative Stress, Aging and Smoking.
「加齢指標たんぱく質SMP30は酸化ストレス、老化や喫煙から肺を保護する」

【掲載誌】

 この新発見の掲載誌は米国胸部疾患学会雑誌『American Journal of Respiratory and Critical Care Medicine (AJRCCM)』であり、平成18年9月1日に掲載された。この雑誌は、米国胸部疾患学会が発行する科学雑誌で、学術誌のグレードを評価するひとつの指標となるImpact factorは8.123と非常に高く、呼吸器疾患を専門とする科学雑誌では最も権威があり、ハードルが高い。(→要旨が閲覧可能)

【研究内容の詳細】

  加齢指標たんぱく質SMP30は肺や肝臓、腎臓など多くの臓器に存在し、加齢に伴い減少するたんぱく質として東京都老人総合研究所で発見された。SMP30の減少は生体機能の低下をもたらし、老年病、生活習慣病の発症リスクを高める。最近、SMP30はほ乳類におけるビタミンC合成に必須な酵素グルコノラクトナーゼ(GNL)であり、SMP30(GNLと同じ)遺伝子を破壊したノックアウトマウスは体内でビタミンCを合成できず、このマウスをビタミンCの少ないエサで飼育すると、普通のマウスの4倍のスピードで老化が進行することを報告した(本年4月4日に米国科学アカデミー紀要『PNAS』において)。
 慢性閉塞性肺疾患(COPD)は高齢者に多いことから老年病として扱われているが、老化がCOPD発症にどのような役割を担っているのか、検討した科学的データは無かった。COPDと老化の関係を明らかにするため、SMP30(GNL)ノックアウトマウスをビタミンCの少ないエサで飼育し、老化を加速させた。この時、ノックアウトマウスの肺では、肺胞の破壊はないものの、肺胞径が早期に拡大し、ヒトの老人肺と同じ病理所見が認められた。また、COPD発症要因のひとつである酸化ストレスも亢進していた。COPDは慢性的な喫煙習慣による『タバコ病』、すなわち肺の生活習慣病である。老化を加速させたマウスを喫煙させたところ、正常マウスでは肺にほとんど変化が認められなかったにもかかわらず、ノックアウトマウスではCOPDの主要な病理変化である肺気腫、すなわち肺胞の破壊による気腔の拡大が生じた。しかも、マウスの喫煙実験で一般に実施される期間の1/3という短期間の喫煙で、高度の肺胞破壊が確認できた。

 今回の研究により、老化やビタミンC不足が喫煙によるCOPD発症リスクを高めることを証明できた。この研究成果は、AJRCCMの編集委員に取り上げられ、『Aging and Cigarette Smoke: Fueling the Fire (老化と喫煙:火に油を注ぐ)』という表題でその研究内容を高く評価された。「Fire」は老化、そして「Fueling」は喫煙、を表している。すなわち、『喫煙は、老化による肺の破壊に油を注ぎ、COPDを発症させる』、という意味である。
 日本でのCOPDの患者数は約530万人と推定される。しかし、その根本的な治療薬は開発されていない。本研究成果は、『COPDの治療や予防』そして『COPDの原因究明』に多大な貢献をすることが期待される。


【問い合わせ先】
東京都高齢者研究・福祉振興財団 東京都老人総合研究所 
老化ゲノムバイオマーカー研究チーム 老化制御 
石神 昭人(いしがみ あきひと) 
Tel 03-3964-3241(内3034)

順天堂大学医学部呼吸器内科 
瀬山 邦明(せやま くにあき)
Tel 03-5802-1063


2006/09/13
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