「保健・医療・福祉」の総合化のシステムづくりについて

 

大山 博(法政大学社会学部教授)

 

1.なぜ総合化が必要であるか。
(1)ニーズは連続的で全体的な性格をもつのに対して、社会サービスは非連続的で
カテゴリカルな性格をもっており、ミスマッチが起こりやすい。

    1. サービス利用者への効果 A公正 B 効率

  1. ケアマネジメントを進める条件整備

2.総合化の概念
総合とは「多元的な諸システムが結合の関係を取り結ぶ社会的過程。

第一段階 一方的な「連絡」

第二段階 「調整」、情報交換、相互肯定的行為がある

第三段階 「連携」or 「協働」、目的を共有、結合して積極的な行為をする
第四段階 「統合」(複合体)諸主体が一体化

3.「高齢者サービス調整チーム」の現状と課題

  1. 全国の自治体で、「調整チーム」設置率96%、実務担当者の「ケース検討会」 の設置率85%、ケアプランを作成しているのは、約20%にしかすぎない。
  2. 調整システムの運用上の問題点
    @情報の共有化およびコミュニケーション不足

    1. 医師、医療機関のかかわり方が困難。参加率約4割、専門性の高い者の発言に左右される。
    2. 異職種間の意志疎通困難
    3. 人事異動で継続性困難
    4. コーディネートができる人材が不足
    5. 所属組織へのフィードバックの不足

(※大山,嶺、柴田編『保健・医療・福祉の総合化をめざして』光生館199711月)
4.今後の課題

  1. 大半の自治体は、第二段階「調整」レベルである。
  2. 私的医療機関母体に老人保健施設と特別養護老人ホームを併設したう複合体
    (統合)が増加している(全国で259存在、二木立著『保健・医療・福祉複合体』
    1998年11月)
  3. 総合化の望ましいあり方の検証が必要 連携(協働)システムが重要
  4.    統合のマイナス面 ・地域独占(利用者の囲い込み)
    ・福祉の医療化(病院化)

    ・利益志向が強まる(クリーム・スキミング)

    統合のプラス面 ・利用者の利便性、安心感

             ・多角経営でコスト削減

  5. 権利擁護システムが必要となる(advocacyの機能を含む)