シンポジウム

「介護保険時代の保健・医療・福祉の連携」の趣旨

 

座長  山手 茂 (東洋大学) 長谷川 万希子(東京都老人総合研究所)

 

  世界に類をみない急速な高齢化に対応し、介護問題を個人や各家庭の問題ではなく社会全体で受け止める仕組みづくりを目指して、西暦2000年4月より介護保険制度が施行されることになり、現在実施準備が進められております。この介護保険制度では、基本目標の一つとして「保健・医療・福祉の連携と統合」が上げられています。

 この言葉は、介護保険実施においても重要なキーワードになっていますが、保健医療社会学の分野では、かねてから多くの研究者によって調査研究が重ねられてきた課題です。この課題に関する研究の経緯と20年前の状況については、『保健・医療と福祉の統合を目指して1980』(保健医療社会学研究会編,垣内出版,1980年)から把握することができます。この本の発刊からちょうど20年経ようとしている現在、当時問題提起された課題はどの程度達成されたでしょうか。多くの実践者・研究者の努力によって改善された部分と、依然として統合に障害を残している部分とがあると考えられます。

 本シンポジウムでは、介護保険実施という新しい状況に対応して、保健・医療・福祉の連携をどう推進するかという問題意識を共有しながら、各シンポジストの方のご報告を伺いたいと思います。

 大山博先生からは、「保健・医療・福祉」の統合化のシステムづくりについて、と題してお話しいただきます。保健・医療・福祉の組織間の連携を実現するためのシステムを、どのように構築していったらいいかについて、全国調査の結果を踏まえて紹介していただきます。

 副田あけみ先生からは、在宅介護支援センターを中心に、同一機関内、および地域内の保健・医療・福祉の各職種間の連携の難しさについて、現状と課題をご報告いただきます。

 金川克子先生からは、「看護と介護の連携のあり方−訪問看護ステーションを例として−」と題して、訪問看護ステーションを中心に、利用者のニーズに対応する連携のあり方をお話しいただきます。その中で、看護と介護の役割・連携、および看護と介護の社会化についても問題提起していただきます。

 高橋龍太郎先生からは、「チームケアにおいて連携を妨げるもの」と題してお話しいただきます。最近全国で多くみられるようになってきた、医療機関を中心とした保健・医療・福祉の複合的な形態(医療機関を母体とした老人保健施設と特別養護老人ホーム)の拡大を視野にいれたお話しをお願いしています。その中でも特に、都市型の医療機関を中心とした在宅訪問診療、訪問看護でのチームケアにおける連携の実態と、それを妨げる要因について指摘していただき、解決策を提言していただきます。

 園田恭一先生からは、保健医療社会学の分野における保健・医療・福祉の連携についての取り組みと、最近の様々な論議において欠落している視点について問題提起をしていただきます。また、保健医療社会学の研究がこの課題にどのように貢献できるか、そこで重要な理論や研究方法論について示唆していただきたいと考えています。