チームケアにおいて連携を妨げるもの

 

高橋龍太郎(東京都老人総合研究所)

ゴールドプランがスタートして以来,保健・医療・福祉の連携がことある毎に強調されている。十年経っても本シンポジウムで取り上げられること自体連携が容易でないことの証左といってよいだろう。強力な指導力が発揮されない限り連携によるチームアプローチは困難であり,限界がある。現在,スムーズな連携が行われている地域は都市部よりも町村部に多いように思われる。そのようなところでは核になるリーダーが多職種をまとめ,調整している。しかし,都市部の病院中心の医療から在宅での介護を想像することは難しい。各職種の人々が多数働いている病院という場ではそれぞれの職種がそれぞれの世界を作っており,暗黙のうちに境界線をひいている。チームケアの力はそれを超えることが要求されるがチームという共同性のなかで容易にあいまいにされ,力はいつまでも育たない。

 

医療と違って介護の現場は医師中心ではない。かといって,介護に関わるどの職種も十分な力をもっているとはいえない。昨年から介護支援専門員(ケアマネジャー)の養成が始まった。保健・医療・福祉の連携のコディネーター,調整役として大いに期待されるところであるが,今行われている研修だけで自分の職種のもつ専門性,すなわち,自分の世界の境界線を突破できる訳でもない。

 

私の考えでは,それぞれの職種のもつ限界を知ることが大きな一歩となると思う。自分達がどのような境界線を引いているかを知ることは,自分と異なる専門職の役割,専門性を知ることにつながる筈である。そして,どのような情報が共有されているか,共有されるべきか,という重要なポイントの精度が著しく高まっていくだろう。ここまでくればどのような援助をすべきか,という援助方針の一致までは遠くない。

 

大都市などの病院中心医療に携わっている場合,病院から出る努力をすべきであろう。ここでいう「病院から出る」とは,実際に在宅訪問診療,訪問看護を実施する場合ばかりでなく,病院という場にあってもその人の生活を想像することは不可能ではないという意味を含んでいる。欧米で行われている生活機能の評価は有用である。評価をもとにして,自分の職種のたてわり体制にこだわらず個々に境界線を破っていくことが連携を妨げるものに対処する道であると考えている。