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医療健康コラム

高齢者の乾癬とアトピー性皮膚炎の分子標的治療

2024年10月09日
皮膚科 部長 種井良二
種井良二先生
皮膚科 部長
種井 良二(たねい りょうじ)

分子標的治療とは

全身の病気の病態メカニズムをタンパク分子や遺伝子のレベルで解析して、各疾患の病態で最も重要な働きを担っている分子(標的)をピンポイントで制御して、疾患を軽快や治癒させることを試みる療法を「分子標的治療」と言います。

今回は、皮膚科領域の代表的な炎症性疾患である乾癬とアトピー性皮膚炎の高齢者症例での分子標的治療について概説します。

乾癬とアトピー性皮膚炎の特徴と分子標的治療

乾癬の症状と病態

皮膚の角化異常を伴う炎症性皮膚疾患で、近年ではメタボリック症候群(肥満、脂質異常、耐糖能異常など)と関係する全身性炎症の皮膚表現型として特徴づけられています。臨床的には表面に鱗屑(白い膜)が固着した紅斑が散在性あるいは局在性に発症し、関節症状を伴う場合は付着部炎というアキレス腱や足底などにも痛みや腫れがみられる特殊な関節炎を呈します(乾癬性関節炎)。

乾癬の病態に関しては皮膚の何らかの抗原に反応して活性化した抗原提示細胞が、サイトカイン(炎症反応誘導する分子)であるTNF(腫瘍壊死因子)- αやIL(インターロイキン)-12/IL-23 を分泌して、これがT リンパ球よりのIL-17 / IL-22 の 分泌を誘導して乾癬に特徴的な病像が形成されると考えられています。

アトピー性皮膚炎の症状と病態

アトピー性皮膚炎は、頑固な痒みを伴う湿疹を特徴とする小児の代表的なアレルギー性疾患ですが、現在では成人期のみならず高齢期にも症状が発現しうるlifelong condition(生涯にわたる疾患) であると考えられています。アトピー性皮膚炎はドライスキンなどの皮膚のバリア障害を起因としてTリンパ球などがIL-13やIL-4を分泌して、これが痒みのサイトカイン(※ 2)であるIL-31などを誘導してType2炎症という特徴的なアレルギー性炎症を形成することが明らかとなっています。

乾癬とアトピー性皮膚炎の高齢者症例での分子標的治療
分子標的治療薬は上記のサイトカイン分子の活性化を細胞の内部で抑制するPDE(ホスホジエステラーゼ)4阻害薬やJAK(ヤヌスキナーゼ)阻害薬と、サイトカイン分子を細胞外でブロックする生物学的(バイオ)製剤に大きく分類されます(図1)。
乾癬とアトピー性皮膚炎01

乾癬では内服薬のPDE4 阻害薬やJAK(TYK2)阻害薬、皮下注射薬としてバイオ製剤の抗IL-12/IL-23、抗IL-23, 抗IL-17 の各抗体製剤が主に使用されます。アトピー性皮膚炎では各種のJAK(主にJAK1)阻害内服薬、生物学的(バイオ)製剤の抗IL-4/ IL-13、抗IL-13、抗IL-31 の各抗体製剤皮下注射薬が使用可能です。

これらの治療薬の登場により難治な乾癬やアトピー性皮膚炎も容易に寛解(※1)導入出来るようになりました(図2、3)。
乾癬とアトピー性皮膚炎02

一般的に高齢者ではよりピンポイントな分子制御が可能なバイオ製剤の方が副作用のリスクが少なく使い易いです。当科では病変の重症度や治療薬の適性あるいは患者さんが負担可能な医療費などを考慮して個々の症例に最適な療法を選択しています。

用語解説

※1 寛解:病気や怪我が一時的によくなり、症状が抑えられていること。
※2 サイトカイン:細胞から分泌され、さまざまな細胞に作用する タンパク質の総称。

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