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板橋お達者健診(コホート・介入研究)
板橋区民を主な調査対象とする長期縦断研究を通じて、高齢期、とくに後期高齢期における健康と自立の維持を支える研究を進めています。身体機能、生活機能、社会的つながり、口腔機能、呼吸機能、さらには血液・尿バイオマーカーを含む多面的な評価により、フレイルやサルコペニアをはじめとする老年症候群の早期発見に有用な指標を検討しています。これらの知見をもとに、新たな健診システムを開発するとともに、健診で把握されたハイリスク高齢者に対して運動・栄養介入を効果的につなぐ仕組みを構築し、その有効性を検証しています。
メンバー
| 統括 | 福祉と生活ケア研究チーム
大渕 修一 自立促進と精神保健研究チーム 笹井 浩行 |
| 研究所内の構成員 | 社会科学系
藤原 佳典 福祉と生活ケア研究チーム 河合 恒、江尻 愛美、今村 慶吾、権野 鋭、吉田 康行、陳 柔因 自立促進と精神保健研究チーム 平野 浩彦、枝広 あや子、本川 佳子、白部 麻樹、小島 成実、志田 隆史、畑中 翔 社会参加とヘルシーエイジング研究チーム 鈴木 宏幸、桜井 良太 老化制御研究チーム 井上 聡、竹岩 俊彦 |
| 他機関の構成員 | 東京医療学院大学
小島 基永 高崎健康福祉大学 解良 武士 埼玉県立大学 西原 賢 北海道大学 渡邊 裕、岩崎 正則 東邦大学 端詰 勝敬 弘前大学 井原 一成 日本大学 五十嵐 憲太郎 |
キーワード
フレイル、サルコペニア、呼吸サルコペニア、ダイナペニア、認知機能、身体機能、筋力、歩行速度、社会的孤立、社会参加、口腔機能、オーラルフレイル、運動・身体活動、デジタルバイオマーカー、スクリーニング・予測モデル、要介護、ADL、IADL、転倒、バランス、骨格筋量、筋質、握力、栄養、食事摂取、タンパク質摂取、ビタミン摂取、炎症、多疾患併存、ポリファーマシー、生活の質
最近の主な研究
1.デジタルバイオマーカーの妥当性検証と関連要因の解明、老年症候群との関連
スマートウォッチやスマートフォン内蔵センサで測定できる歩行、脈拍、睡眠などのライフログに関する研究を行っています。日常生活歩行速度については健診における指標との妥当性の検証や、年齢、日内変動、気温などの関連する要因を明らかにするとともに、フレイルをはじめとする老年症候群との関連を検討してきました。これらの研究を通じて、ライフログを高齢者の健康状態や老年症候群を早期に把握するデジタルバイオマーカーとして活用することを目指しています。
2.生活機能の加齢変化パターンの可視化と機能低下リスクの解明
お達者健診で得られた複数年にわたる経年データを用い、生活機能の加齢に伴う変化パターン(軌跡)を明らかにする研究を進めています。IADL、知的活動、社会的役割などの高次生活機能は一様に低下するのではなく、早期低下群、後期低下群、維持群など複数のパターンに分類されることを示してきました。特に、こうした低下パターンは将来のIADL障害発生と関連しており、早期に低下する軌跡群ではそのリスクが高いことが明らかになっています。これらの解析を通じて、機能低下の早期段階を捉え、予防介入の対象を明確化することを目指しています。
3.社会的孤立・社会参加と高齢者の心身機能との関連
社会的孤立や社会参加が高齢者の心身の健康に及ぼす影響を明らかにする研究を進めています。対人交流の頻度や社会参加の状況を評価し、それらの経時的変化と認知機能低下や死亡との関連を検討してきました。その結果、独居そのものよりも社会的孤立が認知機能低下や死亡リスクと強く関連すること、また社会参加が将来の孤立を予防する可能性があることを示しています。社会的つながりの維持が、高齢期における健康長寿に重要であることを明らかにすることを目指しています。
4.オーラルフレイル・口腔機能低下の実態解明と全身の健康指標との関連
かむ力、のみ込む力、舌の運動や舌圧など、口腔機能を多面的に評価し、オーラルフレイルの実態を明らかにしています。口腔機能の低下は加齢とともに増加し、食事の多様性の低下や社会的孤立を介して身体的フレイルと関連すること、さらにサルコペニアや歯周炎に伴う全身炎症とも結びつくことを示しました。口腔機能の衰えを、全身の健康低下を捉える早期指標として活用することを目指しています。
5.呼吸サルコペニアの定義比較と特徴の解明、身体機能低下との関連
呼吸サルコペニアの定義や判定法の妥当性を検討するとともに、その身体的特徴を明らかにする研究を進めています。最大呼吸筋圧や最大呼気流量などを用いた評価法を比較し、呼吸サルコペニアが握力、膝伸展筋力、歩行速度の低下に加え、全身サルコペニアや認知機能低下とも関連することを示してきました。さらに、死亡リスクとの関連も報告しており、呼吸機能の低下を高齢者のリスク把握に活用することを目指しています。
6.血液・尿バイオマーカーを用いたフレイル・サルコペニアの病態解明
血液や尿中の代謝物、揮発性有機化合物、ビタミン関連指標などに着目し、フレイルやサルコペニアの生物学的基盤を明らかにする研究を進めています。メタボロミクス解析により、サルコペニア発症や筋力低下と関連する代謝物を同定するとともに、尿の揮発性有機化合物を用いた非侵襲的な判別指標の開発にも取り組んでいます。さらに、ビタミンK充足度とフレイルとの関連も示してきました。これらの成果を通じて、フレイル・サルコペニアの早期発見や予防につながるバイオマーカーの確立を目指しています。
7.所内外の大規模コホートへのデータ拠出による統合解析研究
IRIDEコホートやILSA-Jなど、所内外の複数の大規模コホートにお達者健診のデータを拠出し、統合解析研究を推進しています。複数コホートのデータを統合することで、単一研究では難しい検出力の向上や、詳細なサブグループ解析、外的妥当性の検証が可能となります。これにより、糖尿病とダイナペニアの関連、認知機能低下、フレイル発症リスクの予測モデル構築など、多様な健康アウトカムに関する知見を創出してきました。今後も、異なる集団を横断した解析を通じて、より一般化可能性の高いエビデンスの構築を目指しています。