2026.05.08
プレスリリース
神経画像研究チーム
連続アミロイドPETが示す治療反応の違い ~ 抗アミロイド抗体(レカネマブ)治療の効果は6か月で予測可能 ~

ポイント

  • 抗アミロイド抗体(レカネマブ)治療において、アミロイド除去速度に大きな個人差があることを確認
  • 高齢患者ほどアミロイド減少が速く大きい傾向を発見
  • 治療開始6か月時点のPET変化が、その後の除去経過を予測
  • アミロイドが減っても認知機能が低下する患者では、脳血流低下が関与している可能性

概要

アルツハイマー病の抗アミロイド治療は「誰にどのように効くのか」が大きな課題となっています。

東京都健康長寿医療センターの亀山征史と、複十字病院の飯塚友道らの研究チームは、アルツハイマー病(AD)に対する抗アミロイド抗体治療中の患者において、加齢がアミロイド除去の速度(動態)に影響を与える可能性を、実臨床データから明らかにしました。

本研究は、初期アルツハイマー病患者23名を対象に、レカネマブ投与前、6か月後、12か月後にアミロイドPET検査を実施し、アミロイド蓄積量の変化を追跡したものです。

研究の背景

近年、抗アミロイド抗体(レカネマブ)はアルツハイマー病の進行抑制治療として注目されていますが、患者ごとにアミロイド減少の程度に大きなばらつきがあることが知られています。
しかし、この個人差を生む要因、特に加齢の影響については十分に解明されていませんでした。

研究の主な結果

  1. 全例でアミロイドは減少するが個人差が大きい
    すべての患者でアミロイド量は減少したものの、減少の大きさ・速度には顕著なばらつきが認められました。

  2. 高齢患者ほど除去が速い傾向
    意外にも、高齢の患者ほどアミロイドの減少が大きく、かつ速い傾向が見られました。
    これは、同程度の初期アミロイド量・同一治療条件下でも観察されました。

  3. 6か月時点のPETが将来予測に有用
    治療開始から6か月後のアミロイド減少量は、12か月後の減少量を強く予測していました。
    → 早期評価の重要性を示唆

  4. アミロイドが減っても認知機能が低下するケース
    一部の患者では、アミロイドが大きく減少しても認知機能が低下しました。
    これらの患者では、治療前からSPECT で検出される側頭頭頂葉の血流低下が顕著でした。

意義・今後の展望

本研究は以下の重要な示唆を与えます。

  • 抗アミロイド(レカネマブ)治療の効果は一様ではなく、生物学的多様性が存在
  • 年齢が治療反応の指標となる可能性
  • 早期PET評価による個別化医療の実現
  • アミロイド以外の病態(神経変性)評価の重要性

特に、「アミロイドが減る=臨床的改善」ではないことを示し、脳血流などの多面的評価の必要性を強調する結果となりました。

また、今回観察された治療反応の違いは、単なる患者背景の差だけでなく、抗アミロイド抗体の中でも、少なくともレカネマブにおける作用特性を反映している、可能性を示唆します。
本研究は、抗アミロイド治療が「効くかどうか」ではなく、「どのように効くか」を評価する段階に入ったことを示しています。
本研究は単一抗体(レカネマブ)に基づく観察であり、他の抗アミロイド抗体への一般化には慎重な解釈が必要です。

論文情報

  • タイトル:Aging Modulates Amyloid Clearance Kinetics During Anti-Amyloid Therapy: Evidence From Real-World Serial Amyloid PET
  • 掲載誌:Frontiers in Aging Neuroscience
  • 論文種別:Original Research
  • 受理日:2026年2月1日
  • Manuscript ID:1801267

お問い合わせ

結核予防会 複十字病院
認知症疾患医療センター
センター長 飯塚 友道
E-MAIL:iizukat@fukujuji.org
東京都健康長寿医療センター研究所
神経画像研究チーム AI画像解析 専門部長 亀山 征史
E-MAIL:kame-tky@umin.ac.jp
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