2026.05.01
研究トピックス
自立促進と精神保健研究チーム
食事の内容が痛みに関係している?

自立促進と精神保健研究チーム  西元淳司(協力研究員)、 笹井浩行

炎症を促す食生活と慢性的な痛みのつながり

「体の痛み」は年を重ねると誰にでも起こりうるものです。しかし、その痛みの一因が、実は"炎症を促す食事"にあるかもしれないことをご存じでしょうか。炎症とは、体の中で起こる"軽い火事"のような反応です。炎症はけがや感染を治すために必要な反応ですが、長く続くと体をじわじわ傷つけ、神経を刺激して痛みを強めたり、痛みを長引かせたりすることがあります。

炎症を促す食生活とは、例えば以下のような特徴があります。

  • 白米やパンなどの精製された炭水化物を多くとる
  • 甘いお菓子や清涼飲料水をよく飲む
  • 加工肉や脂の多い肉類をよく食べる
  • 野菜・果物・食物繊維が少ない

一方で、野菜や果物、魚、豆類など「抗炎症性の食事」は、体の炎症を抑える働きがあるとされています。

研究内容

これまで海外では、「普段の食事が痛みに関係しているかもしれない」という点に注目が集まってきました。しかし、海外とは食習慣が大きく異なる、日本の地域在住の高齢者では研究が限られており、食事と痛みの関係は不明でした。このような疑問から、私たちは地域在住の高齢者の食事と慢性疼痛(3ヶ月以上続く痛み)の関係を調べました。

本研究では、東京都板橋区在住の高齢者を対象に、食事による炎症の起こりやすさを「食事性炎症指数(DII: Dietary Inflammatory Index)」という指標で数値化しました。DIIスコアが高いほど炎症を促す食事、低いほど炎症を抑える食事になります。以下の図1〜3のQ1〜Q4は、本研究の参加者の食事内容を炎症の程度で4段階に分類したものです。Q1が最も炎症を抑える食事、Q4が最も炎症を促す食事となっており、数字が上がるほど炎症を促す食事となっていることを示しています。本研究の結果、炎症を促す食事を多く摂っている高齢女性ほど、慢性疼痛を抱えている割合が高いことが明らかとなりました(図1)。また、80歳以上の女性、抑うつ傾向のある女性では、炎症を促す食事を多く摂っていることにより慢性疼痛の該当率が高いことが示されました(図2、図3)。

女性における慢性疼痛の該当率図1. 女性において炎症を促す食事を最も摂取している集団(Q4)は慢性疼痛の該当率が50.2%に達していました。
80歳以上の女性における慢性疼痛の該当率図2. 80歳以上の女性において炎症を促す食事を最も摂取している集団(Q4)は
慢性疼痛の該当率が61.7%に達していました。
抑うつ傾向の女性における慢性疼痛の該当率図3. 抑うつ傾向の女性において炎症を促す食事を最も摂取している集団(Q4)は
慢性疼痛の該当率が74.0%に達していました。

まとめ

  • 「炎症を促す食事」が慢性疼痛と関係していることが、東京都板橋区在住の高齢者で示されました。
  • 特に高齢女性や抑うつ傾向のある女性では、食事が痛みの有無に大きく関係する可能性があります。
  • 野菜・果物・魚・大豆製品などを積極的にとり、加工食品・揚げ物・甘い飲み物やお菓子などを控えめにすることで、慢性疼痛の予防につながるかもしれません。

参考文献

1) Scanzello CR. Role of low-grade inflammation in osteoarthritis. Curr Opin Rheumatol. 29(1):79-85, 2017.

2) Shivappa N, Steck SE, Hurley TG, Hussey JR, Hébert JR. Designing and developing a literature-derived, population-based dietary inflammatory index. Public Health Nutr 17(8):1689-1696, 2014.

3) Nishimoto J, Deguchi N, Hatanaka S, Shida T, Ohta T, Kojima N, Shirobe M, Motokawa K, Hirano H, Okamura T, Awata S, Sasai H. Association between pro-inflammatory dietary patterns and chronic pain in community-dwelling older adults: A cross-sectional study. Arch Gerontol Geriatr. 140:106035, 2026.

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