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- 「同居家族がいるから安心」とは限らない 家庭内孤立と精神的健康の関連を解明
「家族と住んでいれば大丈夫?」――東京都健康長寿医療センター研究所・村山洋史研究部長(テーマリーダー)らの研究チームは、同居家族がいるのに家族と交流を持てていない高齢者が存在することに着目し、「家庭内孤立」という概念を提唱し、精神的健康との関連を調べました。この成果は、日本公衆衛生雑誌に掲載されました。
研究のポイント
- 「同居家族や同居者がいるにもかかわらず、家庭内で会話や交流が著しく乏しい状態」を家庭内孤立と定義し、地域在住の40歳以上を対象に実態と精神的健康との関連を検討しました。
- 家庭内孤立に該当する人は、対象者全体の4.7%、同居者がいる人に限定すると5.8%でした。割合は年代が高いほど高く、概ね女性より男性で高い傾向がみられました。
- 家庭内孤立している人は、主観的健康感、うつ状態、ウェルビーイング、孤独感のいずれも不良であり、独居者と比べても精神的健康が不良な傾向がみられました。
- 一方、近所付き合いや同居家族以外との交流が多い場合、家庭内孤立と孤独感との関連は弱まる傾向があり、家庭外のつながりが支えとなる可能性が示されました。
研究の背景
社会的孤立は、死亡、認知症、心血管疾患、うつなど、様々な健康アウトカムと関連することが知られており、その予防や支援は公衆衛生上の重要な課題です。一方、これまでの孤立研究では、独居や家庭外のつながりの少なさに注目することが多く、同居家族や同居者との関係に焦点を当てた研究は十分ではありませんでした。しかし実際には、同居している家族がいても、生活リズムの違いや居住スペースの分離などにより、同居家族とほとんど交流を持てていないケースは散見されます。

研究成果の概要
本研究では、2023年に埼玉県和光市で実施した和光コホート研究のベースライン郵送調査データを用いました。分析対象は、40〜64歳の2,395人と65歳以上の6,429人を合わせた8,824人です。家庭内孤立は、同居者がいる人のうち、平日・週末休日のいずれも同居家族との会話時間が1日15分未満で、かつ家の中で一人で過ごすことが多い人を家庭内孤立ありとしました。
家庭内孤立に該当する人の割合は、対象者全体では4.7%、同居者がいる人に限定すると5.8%でした。年代別には、40〜64歳で3.2%、65歳以上で5.3%であり、年代が高いほど割合が高く、概ね女性より男性で高い傾向がみられました。
精神的健康との関連をみると、家庭内孤立している人は、家庭内孤立していない人と比べて、主観的健康感が低い確率が1.33倍、うつ状態が疑われる確率が1.48倍、ウェルビーイングが低い確率が1.56倍でした。また、孤独感の得点が0.76点高いことが示されました。これらの関連は、基本属性、社会経済的要因、健康状態、家庭外でのネットワークなどを調整した後にも認められました。
さらに、独居者と比較しても、家庭内孤立している人の精神的健康は不良な傾向がみられました。また、近所付き合いや同居家族以外との交流が多い場合、家庭内孤立と孤独感との関連は弱まる傾向がみられました。
研究の意義
家庭内孤立の存在は、日常生活の中で経験的に語られることはありましたが、その実態や健康との関連についてはこれまでほとんど明らかにされていませんでした。本研究は、家庭内孤立という概念を学術的に提唱し、「同居している家族がいるから大丈夫」とは限らないことを、地域住民データに基づいて実証した点に意義があります。従来の孤立対策では、独居者や家庭外の交流が少ない人に注目が集まりやすく、家族と同居している人は支援の対象として見落とされる可能性がありました。
しかし本研究の結果から、同居家族や同居者がいても、家庭内での会話や交流が乏しい場合には、精神的健康が不良である可能性が示されました。家庭内孤立は外から見えにくく、支援者や地域の人が気づきにくい孤立の形です。そのため、地域包括支援センター、自治体、医療・介護・福祉の専門職などが、同居の有無だけでなく、家庭内でどのような交流があるのかにも目を向けることが重要です。また、近隣との交流や地域活動など、家庭外で安心してつながれる場を持つことも、家庭内孤立に伴う精神的不健康を和らげる可能性があります。
本研究は横断研究であるため因果関係は明らかにできませんが、社会的孤立を家庭外のつながりだけでなく、家庭内の交流状況からも捉える必要性を示した点で、公衆衛生上重要な知見です。
論文情報
村山洋史, 横山友里, 野藤悠, 上野貴之, 阿部巧, 野中久美子. 地域在住中高年者における家庭内孤立と 精神的健康: 和光コホート研究を用いた横断分析. 日本公衆衛生雑誌2026; 73(3): 257-269.
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jph/73/3/73_25-067/_article/-char/ja
お問い合わせ
社会参加とヘルシーエイジング研究チーム
研究部長(テーマリーダー) 村山洋史
Email:murayama@tmig.or.jp