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- 「長寿のカギ」は、信頼し合える地域にあり! 大規模データから地域のソーシャル・キャピタルが高い地域に住む男性で死亡リスクが低いことを確認
大規模データから地域のソーシャル・キャピタルが高い地域に住む男性で死亡リスクが低いことを確認
「長寿のカギ」は、住んでいる地域のつながりにあり?――東京都健康長寿医療センター研究所・村山洋史研究部長(テーマリーダー)らの研究チームは、地域住民同士のつながりを表す「ソーシャル・キャピタル」に着目して研究を進めています。この度、近隣凝集性が高い地域に住む男性は、死亡リスクが低いことを明らかにしました。
この成果は、国際学術誌 Journal of Epidemiology に掲載されました。
研究のポイント
- 東京都足立区の65歳以上の地域在住高齢者75,338人を対象に、地域のソーシャル・キャピタルと5年後の死亡率との関連を検討しました。
- 近隣凝集性(近隣者への信頼、地域への愛着や帰属意識)が高い地域に住む男性では、近隣凝集性が低い地域に住む男性と比べて死亡リスクが8〜9%低いことが示されました。
- この関連は、特に65〜74歳の男性で顕著であり、死亡リスクが17〜18%低いという結果でした。
- 男性は女性に比べ、社会とのつながりを持ちにくい傾向にありますが、住民同士が信頼し合える地域環境をつくることが、個人の努力だけに頼らない長寿へのアプローチとなる可能性が示されました。

研究の背景
高齢期の健康を支える要因として、運動、食生活、疾病管理などの個人の生活習慣や健康状態に加え、人と人とのつながりや地域のあり方が注目されています。ソーシャル・キャピタルとは、コミュニティの社会関係に内在する資源を指す概念であり、地域住民同士の信頼感や地域内の交流などを通じて捉えることができます。これまで、ソーシャル・キャピタルはさまざまな健康指標と関連することが報告されてきましたが、地域レベルのソーシャル・キャピタルが死亡率にどう関連するかは、特に日本を含むアジア諸国では十分に明らかになっていませんでした。本研究では、東京都足立区の地域在住高齢者を対象に、地域のソーシャル・キャピタルがその後の死亡率と関連するかを検討しました。
研究成果の概要
本研究では、2015年に東京都足立区で実施した65歳以上の地域在住高齢者全数を対象とした郵送調査のデータを用いました。要介護認定者を除く132,005名に質問紙を送付し、75,338名から有効回答を得ています。これらの対象者は、足立区内の262の町丁目(例:○○一丁目)に居住しています(2015年時点)。
地域レベルのソーシャル・キャピタルとして、近隣への信頼、地域への愛着、地域の一員であるという感覚からなる「近隣凝集性」と、近隣住民との交流の程度を示す「近隣ネットワーク」を評価しました。これらの個人回答を町丁目ごとに集計し、地域レベルの指標として分析しました。アウトカムは、総死亡(死因に関わらないすべての死亡)で、分析は男女別に実施しました。
対象者の平均年齢は73.7歳、男性が45.0%、約5年の追跡期間中に9.0%の死亡が確認されました(平均追跡日数:1,656日)。分析の結果、男性では、近隣凝集性が最も低い地域に住む人と比べて、近隣凝集性が高い地域に住む人の死亡リスクが8〜9%低いことが示されました(図1)。さらに、65〜74歳の男性では、この差は17〜18%とより大きくなりました。一方、女性では、地域のソーシャル・キャピタルと死亡リスクとの関連は認められませんでした。
図1 男性における地域レベルの近隣凝集性と総死亡の関連研究の意義
一般的に、男性は女性に比べて社会的ネットワークやサポートが少ない傾向にあり、退職後には職場を中心としたつながりを失いやすいと考えられます。しかし、そうした男性に地域の集まりや活動に参加してもらおうとしても、簡単にはいかないことも少なくありません。本研究は、男性一人ひとりに社会とのつながりを持ってもらうアプローチだけでなく、住んでいる地域の環境を整えること、すなわち地域のソーシャル・キャピタルを高めることで、男性の長寿につながる可能性を示しました。これは、地域づくりやポピュレーションアプローチの重要性を示す貴重な結果といえます。
保健、福祉、まちづくりの現場では、地域のつながりを育むさまざまな取り組みが行われています。本研究の結果は、こうした取り組みが、特に男性の長寿にとって大きな意味を持つ可能性を示しています。個人への支援に加え、住民同士が信頼し合える地域環境を育む視点の大切さを示した公衆衛生学的意義の高い研究といえます。
論文情報
Murayama H, Sugiyama M, Inagaki H, Edahiro A, Miyamae F, Ura C, Motokawa K, Okamura T, Awata S. Community social capital and all-cause mortality in Japan: Findings from the Adachi Cohort Study. Journal of Epidemiology 2025; 35(6): 270-277.
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jea/35/6/35_JE20240277/_article/-char/ja
(上記リンクから全文読めます)
お問い合わせ
社会参加とヘルシーエイジング研究チーム
研究部長(テーマリーダー) 村山洋史
Email:murayama@tmig.or.jp