2026.06.04
プレスリリース
社会参加とヘルシーエイジング研究チーム
認知症診断前にみられた電気使用量パターンの変化 ―単身高齢者1名の観察研究―

発表のポイント

認知症と診断された方の電気使用量を確認したところ、診断前に朝の電気使用開始時刻が徐々に遅くなるような変化が確認された。

発表内容の概要

東京都健康長寿医療センター研究所の桜井良太専門副部長とエッセンシャルエナジー株式会社の共同研究グループは、認知症と診断された方において、診断前から電気使用量のパターンに徐々に変化がみられることを報告しました。この報告は、電気使用パターンが認知症発症に関連する可能性のある生活変化を捉える一つの手がかりとなり得ることを示したものです。この研究成果は、国際雑誌「Geriatrics & Gerontology International」(5月25日付)に掲載されました。

背景

国立社会保障・人口問題研究所の推計によると、2050年には全世帯の約20.6%(5世帯に1世帯)が65歳以上の高齢単身世帯になると予測されています。単身者では、体調の変化に気づきにくく、特に高齢者であれば健康問題が悪化するリスクが高いと考えられます。そのため、単身者では健康状態の変化を早期に察知する体制が、安心で安全な暮らしを支えるために必要な技術となります。

研究方法と成果の概要

そこで我々は家庭の電気使用量を記録するスマートメーターのデータを用いて、単身高齢者の健康状態の変化を早期に把握できるか検討してきました。この研究の実施中に認知症と診断された女性がいたため、その電気使用量の変化を調べました。
測定開始時に70歳代だった女性は、物忘れが心配になり専門機関を受診しましたが、その段階では大きな異常はないとされ、経過観察となっていました。その後、測定開始から約2年後に物忘れや生活上の問題が目立つようになりました。さらに症状が進行し、その2年後(測定開始後4年後)、認知症と診断されました。
下記の図は、測定開始時から2年間の年平均の電気使用量パターンの変化を示しています。測定開始から2年後には、朝の電気使用開始時刻が遅くなる傾向がみられ、測定開始時と比べると約1時間遅れて電気の使用が始まる様子が確認されました。

 測定開始時から2年後までの、時刻ごとの平均消費電力量の変化
図. 測定開始時から2年後までの、時刻ごとの平均消費電力量の変化

スマートメーターは30分ごとに電力使用量の記録を行う(1日あたり48回の計測)。各年について、利用可能な全日のデータ(0時から23時30分)を平均化し、各時点の平均電力消費量を算出し、年間の平均使用量を比較した。

研究成果の意義

本研究では、認知症と診断された方において、診断前の数年間に、朝の電気使用開始時刻が遅くなる傾向が確認されました。概日リズムの乱れは、認知機能の低下や認知症リスクの上昇と関連していることが知られており、起床時間が遅いほど認知症リスクが高まることも報告されています。したがって、本研究は、電気使用パターンが認知症発症に関連する生活変化(概日リズムの変化)を捉える一つの手がかりとなり得ることを示したものといえます。
ただし、こうした電気使用パターンの変化は、認知症の発症だけによって説明されるものではなく、他の体調変化や生活環境など、さまざまな要因の影響を受けます。そのため、研究の結果は予備的な観察結果として捉え、さらなる調査によって信頼性を高め、社会実装されることが望まれます。

掲載論文

国際科学雑誌「Geriatrics & Gerontology International」(現地時間5月25日)
Onset of Dementia and Changes in Electricity Consumption: A Case Report
(認知症の発症と電気使用量の変化:ケースレポート)

【著者】
桜井 良太(東京都健康長寿医療センター研究所)
岩瀬 喜保(法政大学・エッセンシャルエナジー株式会社)
井藤 佳恵(東京都健康長寿医療センター研究所)
藤原 佳典(東京都健康長寿医療センター研究所)
粟田 主一(東京都健康長寿医療センター研究所)

問い合わせ先
地方独立行政法人
東京都健康長寿医療センター
社会参加とヘルシーエイジング研究チーム
桜井良太
電話 03-6905-6781
Email: sakurair@tmig.or.jp
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