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- どのように「独り好き」は心の健康と関係するのか?―縦断研究で背景にある経路を検討―
発表のポイント
- 独り好き傾向の高さは、抑うつの悪化そのものには直接つながらない一方、人とのつながりの減少を通じて抑うつの悪化と関連する可能性がある。
- 独り好き傾向の高さは、ウェルビーイング低下に直接関連し、さらに人とのつながりの減少を通じて間接的にも関連する可能性がある。
- 独り好き傾向は、心の健康や人とのつながりが変化する原因でもあり、それら変化の結果でもある。
発表内容の概要
東京都健康長寿医療センター研究所の桜井良太専門副部長らの研究グループは、同じ高齢者を2年間追跡した縦断研究により、独りでいることを好む傾向(独り好き傾向)が、将来的なウェルビーイング(心の豊かさ)の低下と関連すること、また人とのつながり(社会的ネットワーク)の減少を通じて抑うつ傾向の高まりとも関連する可能性があることを示しました。この研究成果は、国際雑誌「Aging & Mental Health」(6月2日付)に掲載されました。
独り好き傾向の高さは、抑うつの悪化そのものには直接つながらない一方、人とのつながりの減少を通じて抑うつの悪化と関連する可能性がある。
独り好き傾向の高さは、ウェルビーイング低下に直接関連し、さらに人とのつながりの減少を通じて間接的にも関連する可能性がある。
独り好き傾向は、心の健康や人とのつながりが変化する原因でもあり、それら変化の結果でもある。
背景
これまでの研究から、独りで過ごす時間は、状況や本人の捉え方によって、気分の落ち着きや回復感につながり得ることが報告されています。一方で、独りでいることを好む傾向(以下、独り好き傾向)が高い人では、抑うつ傾向が強い、あるいはウェルビーイング(心の元気さ・充実感)が低いといった関連が分かってきました。
しかし、これら先行研究の多くは横断研究であり、「独り好き傾向が将来の心の健康の変化に影響しているのか」、それとも「心の健康の低下が、その後の独り好き傾向と関連するのか」といった時間的関係(方向性)や、その背景にある経路は十分に明らかではありませんでした。
研究方法と成果の概要
そこで本研究では、地域在住高齢者 391名を対象に、2021年と2023年の2時点で調査を実施し、独り好き傾向と心の健康との縦断的関連を検討しました。調査では、独り好き傾向、ウェルビーイング(WHO-5:心の元気さや充実感を測定する質問票)、抑うつ傾向(GDS:高齢期の抑うつ症状の程度を測定する質問票)、人とのつながりの広さ(社会的ネットワーク)、人付き合いの煩わしさ(社会的交流の負担感)を調べました。分析では、相互の時間的関係(どちらが先行しやすいか)を考慮できる交差遅延パネル分析を用い、ウェルビーイングと抑うつ傾向は性質の異なる側面であるため、それぞれ分けて検討しました。
分析の結果、以下が明らかになりました。
1)抑うつ傾向(GDS)に関する結果
独り好き傾向の高さは、将来の抑うつ傾向の悪化そのものに直接結びつくわけではありませんでした。他方で、独り好き傾向が高いほど、将来的に人とのつながりが狭くなる(すなわち、他者とのつながりの減少)関連が認められました。この他者とのつながりの狭まりは、将来の抑うつ傾向の悪化に関連していました。
また、人とのつながりが少なくなることは、その後の独り好き傾向の高まりとも関連していました。これは、「一人を好むことで人とのつながりが減る」だけでなく、「人とのつながりが減ることで、さらに一人を好むようになる」という、負の循環が生じる可能性を示しています。さらに、独り好き傾向が高いほど、将来的に人付き合いの煩わしさが高くなる傾向がみられました。
2)ウェルビーイング(WHO-5)に関する結果
ウェルビーイングについても、抑うつ傾向とおおむね同様の傾向がみられました。ただし、抑うつ傾向とは異なり、調査開始時に独り好き傾向が高い人では、その後のウェルビーイングの低下と直接関連していることが示されました。

図. 研究で確認された関連性
①高い独り好き傾向は社会的なつながりの少なさに関連し、これを介して、抑うつ傾向の高さと関連する可能性が示された(直接は関連しなかった)。
②高い独り好き傾向は、直接ウェルビーイングの低さと関連していた。
③独り好き傾向が高い人や、社会的なつながりの少ない、ウェルビーイングが低い、抑うつ傾向が高い人では、人付き合いを煩わしく感じやすくなる傾向が認められた。
3)解釈(本研究が示唆すること)
●独り好き傾向が高いからといって、それだけですぐに抑うつ傾向が高まるわけではないが、ウェルビーイング(心の元気さ・充実感)の低下と関連する可能性がある。
●独り好き傾向が高い状態が続くと、人とのつながりが減り、つながりが減るとさらに独り好き傾向が高まるという、負の循環が生じる。
●独り好き傾向が高い状態は、人とのつながりを減らし、間接的にうつ傾向を高める可能性がある。
●「人付き合いの煩わしさ」が独り好き傾向を高めるというより、独り好き傾向が高まった結果として、煩わしさが後から強く意識される傾向がある
研究成果の意義
『一人が好き』という個人の志向や快適さは、余暇時間を過ごすうえで重要な要因であり、尊重されるべきものです。しかし本研究は、独り好き傾向が強い場合、ウェルビーイングの低さと関連し、さらに人とのつながりが過度に狭まると、長期的には抑うつ傾向の悪化とも関連しうる可能性を示しました。
したがって、一人が好きな人であっても、心の健康を保つためには、無理のない形で社会や他者とつながり続けられる「緩やかなつながり」を維持できる環境づくりや支援が重要であると考えられます。
掲載論文
国際科学雑誌「Aging & Mental Health」(現地時間6月2日)
Factors behind solitude leading to poor mental health in older adults: is the preference for solitude an adaptation to social difficulties?
(独り好きが精神的健康度悪化につながる背景要因)
【著者】
桜井 良太(東京都健康長寿医療センター研究所)
河合 恒(東京都健康長寿医療センター研究所)
鈴木 宏幸(東京都健康長寿医療センター研究所)
小川 将(東京都健康長寿医療センター研究所)
平野 浩彦(東京都健康長寿医療センター研究所)
井原 一成(弘前大学)
桜井 政成(立命館大学)
大渕 修一(東京都健康長寿医療センター研究所)
藤原 佳典(東京都健康長寿医療センター研究所)
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―「独りでいることを好む人」でも孤立の悪影響は緩和されない可能性が明らかに―
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(https://www.tmig.or.jp/research/news/nid00000695.html)
お問い合わせ
東京都健康長寿医療センター
社会参加とヘルシーエイジング
研究チーム
専門副部長 桜井良太
Email:sakurair@tmig.or.jp