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- 老人保健施設における認知症短期集中リハビリテーション実施加算の算定は在宅復帰率の高さと関連
発表のポイント
- 全国の介護老人保健施設(老健施設)を対象とした調査データをもとに、短期集中リハビリテーション実施加算を算定している施設のうち、認知症短期集中リハビリテーション実施加算(認短リハ)の算定の有無と在宅復帰率との関連を検討した
- 施設の特性を調整しても、認短リハを算定している施設の方が、算定していない施設よりも在宅復帰率が5.4パーセントポイント高かった
- 老健施設における在宅復帰を支える方策のあり方を考えるうえで、認短リハを提供できる体制整備の重要性を示唆した
発表内容の概要
福祉と生活ケア研究チーム(医療・介護システム研究)と全国老人保健施設協会(全老健)との研究グループは、全国の介護老人保健施設(老健施設)を対象とした調査データを用いて、短期集中リハビリテーション実施加算(短期集中リハ)を算定している施設のうち、認知症短期集中リハビリテーション実施加算(認短リハ)の算定の有無と施設の在宅復帰率との関連を検討しました。施設の特性(要介護度の高い利用者の割合や利用者に対する専門職の数など)を調整しても、認短リハを算定している施設の方が、算定していない施設よりも、在宅復帰率が5.4パーセントポイント高いという結果でした。老健施設における在宅復帰を支える方策のあり方を考えるうえで、認短リハを提供できる体制整備の重要性を示唆するものです。本研究成果は、2026年7月3日に国際学術誌『Journal of the American Medical Directors Association』に掲載されました。
研究の背景と目的
高齢化が進む日本では、入院後に自宅での生活に戻ることができるように支える仕組みづくりが重要になっています。介護老人保健施設(老健施設)は、病院から退院後の高齢者に対してリハビリテーションやケアを提供し、在宅復帰を支援する役割を担っています。特に、認知症のある高齢者では、退院後の生活機能の維持・改善が在宅復帰に重要であると考えられます。
老健施設では、入所後3ヶ月の間、短期集中リハビリテーション実施加算(短期集中リハ)に加えて、認知症のある利用者に対しては、認知症短期集中リハビリテーション実施加算(認短リハ)を提供することができます。認短リハでは、利用者の生活機能の改善をめざして、主に理学療法士、作業療法士、言語聴覚士によって認知機能の維持・改善や認知症の行動・心理症状※1の改善に特化したリハビリテーションプログラムが実施されます。先行研究では、認短リハが認知機能や生活機能の改善に有効であったということが報告されていますが、在宅復帰との関連を検討した研究はありませんでした。
そこで本研究では、全国の老健施設を対象とした調査データを用いて、短期集中リハを算定している施設のうち、認短リハの算定の有無と施設の在宅復帰率との関連を明らかにすることを目的としました。
研究結果
2024年12月から2025年2月に実施された全国調査では、全老健に登録する3,532施設のうち、527施設(回答率14.9%)から回答がありました。このうち、短期集中リハを算定し、必要な情報がそろっていた434施設を主解析の対象としました。434施設のうち、264施設(60.8%)が認短リハを算定しており、170施設(39.2%)は算定していませんでした。在宅復帰率の平均は、認短リハを算定している施設で45.5%、算定していない施設で36.6%と、認短リハを提供している施設の方が高い値を示しました。さらに、施設規模、要介護度の高い利用者の割合、認知機能障害の重い利用者の割合、利用者に対する専門職の数(看護師、介護職、リハビリ職など)、各種加算の算定状況(認知症ケア加算など)などを調整した解析でも、認短リハを算定している施設では、算定していない施設に比べて在宅復帰率が5.4パーセントポイント高いことが示されました。
今後の課題
本研究にはいくつかの課題があります。まず、調査の回答率が高くないため、回答施設に偏りがあった可能性があります。次に、観察研究であるため、認短リハと在宅復帰率の関連は示されたものの、因果関係を直接示すものではありません。また、施設単位の調査であるため、利用者個人の認知機能や家族支援などの情報を十分に反映できておらず、結果に影響した可能性があります。今後は、利用者の特性も含む縦断研究などにより、認短リハの効果をより詳細に検証する必要があります。
研究の意義
本研究は、日本全国の老健施設を対象とした調査データを用いて、全国で実施されている認短リハと在宅復帰率との関連を検討した初めての研究です。短期集中リハを算定している施設の中でも、認短リハを算定している施設で在宅復帰率が高かったことは、認短リハを提供できる体制を整備することが、老健施設における在宅復帰を支えるうえで重要である可能性を示しています。これらの知見は、老健施設における在宅復帰を支える体制整備のあり方を検討するうえで、有益な示唆を与えるものです。用語解説
※1 認知症の行動・心理症状:BPSD、Behavioral and Psychological Symptoms of Dementia認知症の症状には、物忘れなど、脳の機能低下を示す『中核症状』と『中核症状』に伴ってみられる行動・心理症状である『周辺症状』に分けらえる。BPSDはこの『周辺症状』とほぼ重なる概念で、暴力、暴言、不安、抑うつ、幻覚、妄想、徘徊などの症状を指します。本人の生活のしづらさにつながるだけでなく、介護負担の増加や在宅生活の継続を難しくする要因にもなります。
掲載論文
雑誌名:Journal of the American Medical Directors Association論文名:Association of intensive cognitive rehabilitation with discharge to home
執筆者名(所属機関名):
光武 誠吾(東京都健康長寿医療センター研究所 福祉と生活ケア研究チーム)
平田 匠(東京都健康長寿医療センター研究所 福祉と生活ケア研究チーム)
秋下 雅弘(東京都健康長寿医療センター)
東 憲太郎(全国老人保健施設協会)
鳥羽 研二(東京都健康長寿医療センター)
掲載日時(現地時間):2026年7月2日
掲載日時(日本時間):2026年7月3日
(オンライン掲載)
掲載URL: https://authors.elsevier.com/sd/article/S1525861026001970
DOI: https://doi.org/10.1016/j.jamda.2026.106307(106307)
【本プレスリリースに関するお問い合わせ先】
地方独立行政法人東京都健康長寿医療センター
総務係広報担当
TEL:03-3964-1141
E-mail:kouhou@tmghig.jp
公益社団法人全国老人保健施設協会
総務部総務課
TEL:03-3432-4165
E-mail:info@roken.or.jp