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人工内耳手術について説明します
耳鼻咽喉科 医長 鈴木康弘
鈴木 康弘(すずき やすひろ)
難聴について
難聴には大きく分けて3種類あります。- 伝音性難聴(外耳や中耳に問題がある)
- 感音難聴(内耳から脳にかけて問題がある)
- 混合性難聴(1と2の両方が存在する)
1の代表は、急性中耳炎、滲出性中耳炎、耳垢栓塞です。これらはいずれも何らかの治療をすることで改善します。
2の代表は、突発性難聴、加齢性難聴です。
突発性難聴は、一般的にステロイド漸減療法という治療を行いますが、改善する人もいれば改善せずに難聴が残る人もいます。加齢性難聴は、その名の通り加齢に伴って生じる難聴ですが、治療法はありません。しかし難聴の状態のままでは、日常生活に支障があるだけでなく、コミュニケーションの減少や社会参加の減少、危険察知能力の低下等から認知機能の低下、つまり認知症発症の誘因になる可能性があります。アルツハイマー病やうつ病の発症率を増加させるという報告もあります。
生活の質を高めるために、加齢性難聴の方には補聴器をお勧めすることになります。しかし補聴器は器械ですので効果に限界があり、特に高度難聴の方は、補聴器を使ってもコミュニケーションが取れるようにならない事もあります。そのような高度難聴の方の治療法に人工内耳があります。
人工内耳・手術について
人工内耳は大きく2つのパーツで構成されており、体外に装着するサウンドプロセッサ(送信用コイル)と、皮下に埋め込むインプラント(受信装置)です(図1)。さらにインプラントには蝸牛内に挿入する電極がついています(図2)。インプラントと電極は外科手術で挿入します。サウンドプロセッサは、補聴器に似た耳掛けタイプのものと、円盤型のコイル一体型があります(図2)。
いずれの形式でも、器械自体は高額です。しかし人工内耳の適応になるのは高度難聴の方ですので、身体障害者(聴覚障害)の申請が可能です。福祉の方で器械の費用を助成してくれますので、実際の負担は少なくなります(手術の費用は別にかかります)。手術の合併症として、顔面神経麻痺や痙攣などの報告があります。
図1 マイクから取り込まれた音は、変換装置で電気信号に変換されます。送信用コイルから受信装置に伝えられ、その情報が電極を通して蝸牛から直接聴神経に伝えられ、脳が音として認識します。
図2 コクレア社ホームページより術後について
補聴器は、定期的に器械からの出力などを修正して、少しずつ耳の状態に合わせていく調整という作業が必要になり、装用してすぐに聞こえるようになるわけではありません。人工内耳も同様で、手術をしてもすぐに聞こえるようになるわけではありません。人工内耳を通じた音は器械的に合成された音なので、言葉として聞き取れるようになるためには、補聴器の調整に似た、リハビリテーションが必要になります。リハビリテーションは、一般的に言語療法士という資格を持った方が行います。
最後に
日本では1985年から行われるようになった人工内耳手術ですが、手術件数は年々増加しており、特に小児と高齢者の症例が増加しているという統計が出ています。補聴器を試してみたがうまく聞き取れるようにならなかった高度難聴の方で人工内耳に興味がある方は、一度外来で相談していただければと存じます。適応の判断から障害者手帳の申請まで、実際の手術から術後の経過観察、リハビリテーションまでトータルに対応させて頂きます。
