東京都介護予防・フレイル予防推進支援センター

センター長挨拶

「介護予防・フレイル予防」×「○○○」の発想で第10期計画に備える」

 2027年度に始まる第10期介護保険事業計画は、団塊の世代がすべて75歳以上となった2025年を越え、いよいよ高齢者人口のピークと現役世代の急減が重なる「2040年問題」へ向かう重要な節目となります。都内自治体の皆さまにおかれましては、制度の持続可能性を確保しつつ、地域包括ケアを深化させるための計画策定に奔走されていることと思います。

 10期計画のテーマとして、①介護人材の確保と生産性向上、②地域共生社会と包括的支援の推進などが挙げられます。いずれの分野も「社会的ニーズは極めて大きいが、資源は絶対的に不足」という危機的状況にあります。これらの分野が持続・発展するためには、分野間が連携し化学反応をおこす“掛け合わせ”の発想が鍵となります。ビジネス領域で「A×B」が新たな価値を生むように、介護予防の分野でも同様の発想が求められています。
 例えば①については、「介護予防・フレイル予防」×「介護人材確保」という視点です。私たちが研究してきた高年齢介護助手は、まさに掛け合わせの好事例です。全国の高齢者施設の約半数で、地元高齢者が資格を必要としない周辺業務を担い、介護職の負担軽減や専門業務への集中を支えています。高齢者本人にとっては社会参加と介護予防の機会となり、施設にとっては地域とのつながりを強める存在にもなります。地域イベントでは友人や近隣住民を誘って盛り上げる“親衛隊”として活躍するなど、DX化や遠方から通勤する職員では代替できない価値を生み出しています。こうした取り組みが広がる地域には、「介護予防担当」×「介護施設・人材担当」が連携する自治体戦略が見えてきます。
 次に、②については「フレイル発症予防」×「フレイル重症化予防」という視点です。第10期計画では、一般介護予防に加え、総合事業のさらなる充実が不可欠です。高齢者が元気なうちから地域や医療・介護専門職とつながり、介護が必要になっても自分らしく暮らし続けられる地域共生社会の実現には、縦横に張り巡らされた施策の連動が求められます。運動・栄養・社会参加に加え、加齢とともに慢性疾患のコントロールが欠かせない以上、かかりつけ医との連携は避けて通れません。

 東京都では2025年度から、東京都医師会・東京都健康長寿医療センターと連携し「フレイルサポート医」による地域連携システムづくりが始まっています。モデル自治体では、かかりつけ医がフレイル高齢者を早期に把握し、地域の通いの場など多様な社会資源につなぐ仕組みづくりが検討されています。これは、英国で広がる「社会的処方」を東京流に応用した取り組みとも言えます。医療だけでは解決できないフレイル・孤立・慢性疾患などの課題に対し、地域の文化活動、農園芸、スポーツ、就労的活動など、生活者として参加できる場へつなぐことで、QOLやウェルビーイングの向上を図るものです。
 掛け合わせが増えるほど複雑に見えるかもしれませんが、「どうせアセスメントするなら一括で」「フレイルサポート医を通じて医師とつながる機会に」「既存の認知症共生型の場にフレイル高齢者も合流」など、思わぬメリットも生まれます。もちろん、インセンティブ設計やリンクワーカーの役割、地域資源の偏在など課題はあります。しかし、多様なステークホルダーが集まる東京だからこそ、多種多様な掛け合わせが可能でしょう。「A×B」から120%の成果が生まれるかもしれません。その時こそ、皆さまは支援者冥利に尽きるのではないでしょうか。

 私たちは、東京都健康長寿医療センター研究所およびフレイル予防センターの知見とエビデンスを基盤に、皆さまの事業推進を全力で支援してまいります。本年度もどうぞよろしくお願いいたします。

社会科学系副所長藤原佳典
令和8年5月

東京都健康長寿医療センター研究所副所長

東京都介護予防・フレイル予防推進支援センター長
藤原 佳典

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